四阿山トレッキング記#1
日本百名山四阿山登頂と雲上の宿あずまや高原ホテル
2014年5月。長野の四阿高原にあるあずまや高原ホテルに宿泊し、日本百名山の四阿山に登頂。山にはまだ雪が残っていて登るのが大変だったが、標高2354mの山頂からは360度の絶景が広がっていた。麓には牧場があり、緑の草原の丘と真っ青な空、遠くには北アルプスが連なり、その風景はどこか外国を思わせる。標高1500mのホテルの庭からは満天の星空、露天風呂からは浅間山を始めとする信州の山並を見ることができた。
このトレッキング記では、ホテルの脇の登山口から山頂までのルートを写真満載で詳しく紹介。
1日目:新宿~四阿高原
新宿からあずまや高原ホテルまで
GW後半、往復の直行バスとホテルだけがセットになっている2泊3日のフリーツアーで、日本百名山の四阿山(あずまやさん)のトレッキングに行ってきました。
朝8時、都庁にある駐車場から出発。バスの車内はほぼ満席で座席の間も狭いですが、安くて便利なので仕方ない。
GWとはいえ、暦の上ではこの日は平日だったため道も空いていて予定時刻より早めに進んで行きます。途中のサービスエリアでトイレ休憩やランチタイムをとり、ホテルのある長野県の上田市へ。
市街から山道をぐんぐん登っていくと道の行き止まりに今日のホテル「あずまや温泉 あずまや高原ホテル」(現在閉館)がありました。このホテルは標高約1500mの山腹にあり、ここまでは公共の交通機関がないので、こういうツアーか、車、タクシーで来るしかありません。また自分の車で来ても、この駐車場はホテル利用者に使用が限られているので、ホテルに宿泊するか、日帰り温泉を利用するかしないと停められないようです。
玄関を入ると熊がお出迎え。リアルなのでちょっとびっくりします。
その体には以下のような注意書きが。
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散歩などの時は必ず鈴・ラジオ・ペットボトル等を!
ホテル周辺は野生動物の宝庫です。熊など動物は思いもかけずに人間に出くわすと身を守るために戦います。
必ず「音」を出し、人間が来ることを知らせることでトラブルを防ぐことができます。
※ペットボトルの使い方
空のペットボトルのキャップを外し、手で握ったり話したりすることで「ペコペコ!」という音を出します。
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時刻は12時半。部屋には15時にならないと入れませんが、お風呂はすでに利用できるとのこと。私達は外の散策に出かけるつもりでしたが、雨が降り始めたのでしばらくロビーのソファーで待っていました。このホテルのロビーはアットホームな感じでとても居心地が良くて、本やゲームなどもたくさんあり時間が潰せます。
少し待つと雨が止んだので、ホテルでもらった散策マップを参考にホテル周辺を歩いてみました。ホテルのすぐ脇から四阿山への登山道や散策ルートが森の中へのびています。
私達は千曲川の源流があるという場所まで行ってみることにしました。森の中に入るとところどころに家が建ち、どうやらこのあたりは別荘地のようです。いくつかあるわき道には、「ホテル関係者以外立ち入り禁止」の札が下がっているところもありますが、宿泊者は入ってもいいそうなので遠慮せずお邪魔します。
気持ちの良い道を40分ほど歩くと、水の流れる音が聞こえはじめ源流に到着。綺麗な水が岩の間から流れ出ていました。この小さな流れがやがて立派な川になっていくんですね~。
そろそろ部屋に入れる時間が近づいてきたので、別の道を通ってホテルに戻りました。
雲上のあずまや高原ホテルの温泉と夕食
部屋は和洋室で、バス・トイレ付き。部屋の窓からはホテルの庭と山並が見えました。
少し休んでからさっそくお風呂へ。広い内湯と、二段になった露天風呂があり目の前には浅間山などの山々が見えます。さすが「お宿百景甲信越エリア第一位」を獲得しただけある。
お風呂の後は夕食。山側の壁一面が大きなガラスになっているレストランでいただきます。
今日のメニューは牛肉のしゃぶしゃぶ、虹鱒の塩焼き、桜海老と大豆の炊き込みご飯など。
牛肉が肉厚で柔らかく、胡麻ダレとピッタリ。各自のお釜で炊くごはんや最後の桜のアイスのデザートなども美味しかった~。
寝る前にもう一度お風呂に行きましたが、今度は山の代わりに夜空に浮かぶたくさんの星が見えました。
2日目:四阿高原~四阿山山頂~四阿高原
牧場突っ切りコース
6時半起床。部屋の窓から外をみると山の間に雲海ができていました。本当に「雲上のホテル」です。
7時から昨日のレストランでバイキングの朝食。信州だけあって漬物が美味しく朝からお腹一杯食べてしまいました。
8時。昨日フロントで頼んでおいたおにぎりを受け取って四阿山トレッキングに出発。おにぎりは、前の日に頼んでおくと、翌朝出勤する従業員さんが途中のコンビニで買ってきてくれます。(ホテルのまわりにはお店はまったくありません)
外へ出ると、ホテルの前庭からも素晴らしい山並みが見えました。
朝日がサンサンと照らす中、ホテルの脇の登山口へ。そこからまっすぐ行くと柵があり、四阿山と書かれた看板がかかっているので、柵の横を回りこんで奥へ入ります。熊笹の中の道を登っていくと、ホテルから30分ほどで牧場に突き当たります。
本道はそこから左に曲がって牧場を迂回していくのですが、ホテルの人に「柵を乗り越えて牧場を突っ切ってもいいですよ」と言われていたので、その通りにしてみます。
牧場に入ると木はなくなり、短い草が生える草原の丘がうねうねと続いていました。そして目の前にはこれから目指す四阿山と、その横に根子岳がお目見え。さらに右手には浅間山も綺麗に姿を現していました。
日差しを避けるものが何もないので日焼け対策は必須ですが、視界が開けた展望と吹き抜ける風が気持ちいい。
その丘をひたすら登り、そこそこ上まで来たところで左に進路を取り、柵を乗り越え本道と合流。下の方を見ると道にまだ雪が残っているのが見えました。
ここから本来のルートを通って山頂を目指します。
雪が覆う登山道とショッキングポイント
本道に合流してから少し行くと、前方にもけっこうな量の雪が現れ始めました。まさかこんなに残っているとは思っていなかったので、アイゼンもストックも持参していません。アイスバーン状態ではないので、アイゼンはなくても登れましたが、その代わりズボズボと足が取られ、思うように前へ進めない。ふと、数年前の同じ時期に登った北アルプスの涸沢カールを思い出しました(アレもきつかった)。
さらにこちらのルートは、登る人が少ないせいか、はっきりとしたトレースが残っておらず、幅の広い雪原状態になっている箇所では、どこが道なのかよくわからず何度かコースアウト。一応ところどころに、木の枝に結ばれている目印のリボンがあるのですが、見落とすことも多くなかなか大変でした。
結局山頂までの間で会った人は、こんなに雪が積もっているとは思わずスニーカーで来てしまった単独行の女性と、同じく単独行の男性の二人だけ。やはり、公共の駐車場がない四阿山高原ルートは人が少ないのかもしれない。このルートとは別に菅平高原の方から登る道もあるのですが、そちらの登山口まではバスが通っていたり、休憩所があったり、避難小屋があったりと便利なようです。
雪の登りが続きいいかげん泣きが入ってきた頃、雪もなくなり見渡しのいい場所に出ました。岩がゴロゴロ転がる道ですが、雪道よりはよっぽど歩きやすい。
さらに上を見ると、登りきった坂の上にはもう新たな山陰が見えず、もうすぐ頂上の気配。登山口から3時間半ずーっと登りで辛かったけど、時間的にもそろそろ着くころです。
しかし、どんどん登っていくと、なぜだか目の端に白い塊が見えてきました。まさかと思いつつもよく見ると、どう見ても「私が山頂です」という、いかにも「てっぺん」の形をした山塊がそそり立っていました(しかも見た感じけっこう急登)。
どうやらゴールはまだまだらしい・・
後に、この白い頂が見えて一気に心が折れた場所を「ショッキングポイント」と呼んで、懐かしみながら思い出話しをしています。