蔵王温泉旅行記#1
東北の名湯のにごり湯と新緑の蔵王連山トレッキング
2015年5月。新緑が美しい蔵王温泉に4連泊。連日、蔵王の山々のトレッキングや温泉街の散策をし、夜は「東北の草津」とも言われる乳白色に濁る硫黄泉で温泉三昧。ロープウェイやスカイケーブルを利用すれば簡単に山頂にアクセスでき、地蔵山や熊野岳、鳥兜山などの山歩きを楽しむことができる。周辺にはドッコ沼や不動滝、麓には水芭蕉が咲く鴫の谷地沼などの見所も多く、温泉街には東北地方最大の蔵王温泉大露天風呂をはじめ、様々な共同浴場も完備。観光の合間には蔵王温泉名物の稲花餅(いがもち)や玉こんにゃくで一休みするのもいい。
1日目:東京(新宿)~蔵王温泉
新宿から山形の蔵王温泉へ
ゴールデンウィーク後半に、4泊5日で山形県の蔵王温泉に行ってきました。今回も往復の交通と宿(1日2食付き)のみついたフリーの格安バスツアーを利用。とても便利なので、もっとコースを増やしてほしい。
8時すぎ新宿を出発し上野経由で向かいます。渋滞もなくスイスイ進み、国見SAでランチタイム。ちょうどお昼時だったのでレストランはかなり混雑していたのでおにぎりなどを買って、外のベンチで食べました。牛タンカレーパンがあったので食べてみましたが、ボリュームたっぷりだったけどお肉がちょっと硬かったかな~。
山形蔵王ICで高速を下りて、新緑がまぶしい山道を登っていくとほどなく蔵王温泉に到着。
時刻は15時すぎ。東京から約7時間の道のりでした。
お土産屋さんに立ち寄って玉こんにゃくの試食をしてから、今日から4連泊する蔵王温泉 ホテル ルーセントタカミヤへ。温泉街の中にあり蔵王中央ロープウェイの乗り場も目の前なのでどこへ行くにも便利です。
蔵王は今、噴火警戒中ですが、蔵王温泉街は噴火口から山ふたつを隔てて5km以上離れているので安全とのこと。今のところ立ち入り禁止区域は火口から1.2kmの範囲で、お釜以外の見所には問題なく行くことができます。
蔵王ロープウェイで地蔵山頂駅から三宝荒神山へ
ホテルでこれからの滞在における説明をいろいろ聞いたあと、部屋に荷物だけ置いて、急いで明日から運休するという蔵王ロープウェイに乗りに行きました。ホテルの前のではなく、5分ほど歩いた場所にある地蔵山まで行くやつです。
整備点検のため6月はじめまで運休らしいのですが、せめてこの週末(5月10日)までやっていてほしかった。
時間も時間だし、連休最終日で蔵王の噴火騒ぎもあるせいか、ロープウェイ乗り場はガラガラ。3時45分、貸切で夕暮れ間近の蔵王山を登って行きました。
途中、樹氷高原駅で乗り継ぎ、標高1661mの地蔵山頂駅へ。
この駅は、三宝荒神山(1703m)と地蔵山(1736m)の間にあり、目の前の広場には蔵王三大神のひとつ地蔵尊が安置されています。
蔵王地蔵尊
このお地蔵さまは、今から二百余年の昔、安永四年八月(1775年)に建てられたものであります。その昔、麓の東沢村の庄屋に、跡継ぎが幼くして没し育たなかったことから男子の長命を祈願して建てられたものとつたえられております。
もともと、この蔵王山は、けわしい山で遭難者が絶えなかったのが、ここにお地蔵さまがまつられてから、ふしぎと遭難者が少なくなり、またこのお地蔵さまにお参りすれば、願い事がかなえられ、不慮の災難からものがれられるところから災難よけ地蔵尊とか、所願成就の地蔵尊とよばれて、年ごとに信仰者がふえ、いつとはなしに、右手の円い山まで地蔵岳とよばれるようになりました。(案内板より)
ロープウェイの帰りの最終が4時45分とのことで、時間もないので、すぐに登れそうな三宝荒神山へ行ってみました。
5~6分ほど登ると山頂に到着。まわりの木々が低いので見渡しがよく、地蔵山の向こうの熊野岳(1841m)の山頂も見えました。一通り写真を撮り、早々に下山。
駅の屋上が展望台になっているようなのでそちらにも行ってみると夕暮れの蔵王の山々が見渡せました。
そろそろ時間もなくなってきたので、ロープウェイのチケットを買ったときに付いていたフリードリンクを飲むために、駅のレストラン「山頂」へ向かいます。先客のグループがいましたが、運休前の最後のお客さんになってしまいました。
再びロープウェイを乗り継いで麓に下りホテルへ向かいます。
ホテルルーセントタカミヤの食事とお風呂
蔵王温泉 ホテル ルーセントタカミヤで今回割り当てられた部屋は、ちょっと狭くてテーブルも小さく眺めもイマイチ。
ただ、スタッフの対応はとても良く、夕食も毎日メニューを変えてくれるなど、部屋以外に関してはとても居心地の良いホテルでした。また、宿泊者は、蔵王にある系列の宿のお風呂にも無料で入ることが出来るのも魅力です。
お風呂が入れる宿
- 蔵王温泉 深山荘 高見屋 <タカミヤホテルグループ>
- 蔵王温泉 たかみや瑠璃倶楽リゾート <タカミヤホテルグループ>
- 蔵王温泉 タカミヤヴィレッジ ホテル樹林
- 蔵王温泉 ホテル ハモンドたかみや <タカミヤホテルグループ>
18時。お風呂に入る間もなく夕食の時間になったのでホテルの食事処へ向かいます。テーブルも大きく隣の席とも間隔があるので気を使わずいただけます。今夜のメニューのメインはしゃぶしゃぶで、量もちょうどよく、いろいろな料理がちょっとずつあるのもうれしい。
食後、少し休憩して、楽しみにしていた温泉に入りに行きました。内湯には木もれ陽の湯(源泉かけ流し)とひのきの湯(沸かし湯)があり、外に露天風呂の葉がくれの湯(源泉かけ流し)があります。
白濁したお湯は源泉かけ流しで硫黄の香りがほんのりし、「東北の草津」と言われるほどの名湯。開湯1900年にもなるそうです。
草津温泉の他、万座温泉、奥塩原元湯温泉などと似たような泉質で、どれも「温泉に入りました」という気持ちにさせてくれるお湯。人も少なく、ほとんど貸切でのんびりできました。
蔵王温泉
蔵王温泉は、山形の山形市南東部、蔵王連峰の西麓にある温泉。
標高880mに位置し、古くは高湯と呼ばれた。同県の白布温泉、福島の高湯温泉と共に奥羽三高湯の一つに数えられる。
皮膚を強くする~美肌の湯~
蔵王温泉は、硫黄と酸性が強い温泉です。心臓、便秘、糖尿などにも良いとされている温泉の血流促進効果に加えて、硫黄泉には表皮の殺菌作用や皮膚を強くする作用があることから「美肌の湯」としても親しまれています。
強い臭気も温泉情緒の一つ
硫黄泉、酸性泉ともに臭気が強いため、蔵王温泉街には独自の香りが立ちこめています。はじめは少し違和感を覚えるかもしれませんが、これも温泉情緒の一つ。日常を離れた開放感が実感でき、リラックス効果も高まることでしょう。
源泉温度:45~60℃
湯量:毎分約5700リットル
PH:1.25~1.6(案内板より)
2日目:蔵王温泉(地蔵山までトレッキング)
朝食は昨夜と同じ場所でバイキング。山形名物のからから汁や玉こんにゃくなどもあり美味しかったです。
蔵王温泉街
8時半、ホテルを出発。まだ朝早いせいか人の姿もほとんどありません。近くの24時間営業のコンビニでお昼とおやつを購入。
観光案内所で地図をもらい蔵王スカイケーブルで山の上を目指します。蔵王ロープウェイと蔵王中央ロープウェイは今日から運休ですが、スカイケーブルは5月28日までやっているらしい。
スカイケーブルの乗り場の「上の台駅」まで観光がてら温泉街を通って行きました。町中を流れる川や用水路から湯気が立ち上っています。共同浴場や旅館が立ち並ぶ高湯通りは日本の小さな温泉街といった感じでとてもいい雰囲気。
高湯通りを突き当るとそこから長い石段が続き、その上に薬師神社と酢川温泉神社があります。
酢川温泉神社
祭神 大国主命 少彦名命 須佐之男命 軻遇突智神
由緒 清和天皇「三代実録」の条に授貞観15年6月26日出羽国正六位上酢川温泉神従五位下とあるは本社なり。酢川温泉は当温泉の古名にして高湯温泉とも称せり。当社は龍山上に本宮蔵王山熊野岳に離宮(昭和27年蔵王山神社と改称)。 本殿は口の宮にして三宮一社なり古来社殿をこの地置く中世神仏融合説により薬師如来を併す。明治維新神仏分離令によりこれを庵寺に移し明治11年旧に復す。昭和34年社殿の改築を計り金55,8318円の寄進を得同年11月現地に竣工す。旧社殿は薬師神社と改称し先の薬師如来を宝物として安置す。薬師像は国立文化財研究所の鑑定の結果鉄仏にして鎌倉時代の本県三仏中の一なり。(案内板より)
スカイケーブルで蔵王国定公園の中央高原へ
酢川温泉神社からほどなく上の台駅に到着。片道チケット(800円)を買い乗り場へむかいます。ロープウェイのように出発時間は決まってなく、お客さんが来たらすぐに乗せてくれるので便利。けっこうくたびれたカゴですが、8分ほどで山の上まで連れて行ってくれるのはありがたい。
山頂の中央高原駅に着くとすぐ目の前に蔵王三大神のひとつ蔵王大権現の社がありました。そこを右に行くとドッコ沼や不動滝に至ります。
蔵王と蔵王大権現
郷土史家 武田好吉
陸奥をふたわけざまに聳えたまふ 蔵王の山の雲の中に立つ
歌聖齋藤茂吉の歌のごとく、奥羽の天地を南から北に大きく二分して聳える雄大な蔵王は、その昔「不忘山」とか「刈田嶺」「よねの山」などとも呼ばれていましたが、修験道が弘通してからは、「蔵王山」と称されるようになり、麓の修験に蔵王権現がまるられるようになりました。
蔵王権現の躍動する雄猛無双な姿と三眼怒髪の大忿怒相は、どんな悪魔をも降伏して平和を招来する象徴とし、又頼もしい農耕用の水の神として、慕われ崇敬されております。
もともと蔵王権現は、修験道の開祖で後の神変大菩薩の称号を贈られた役ノ行者小角の祈念によって湧出した山岳斗薮の守護神でありましたが、登山の大衆化とともに広く人々から尊崇されるようになりました。(案内板より)
ドッコ沼から片貝沼まで
道路にはまだ雪がけっこう残っていましたが、様子をみながら進んでみることに。
まずはすぐ近くのドッコ沼に立ち寄りました。
独鈷(ドッコ)沼の由来
覚山法師が修行の為、金剛杵を手に蔵王山に入り、この沼にさしかかったところ、にわかに竜が現れた。呪経を唱え、金剛杵の独鈷を水面に投げ入れると、竜は静かに沼に沈み再び姿を現さなかった。それ以来、この沼を独鈷沼と呼び竜を水神様として祀りました。(案内板)
人けのない木立の向こうに小さな湖面がのぞき神秘的。以前訪れた裏磐梯の五色沼を彷彿とさせます。もう少し風がなかったら湖面が鏡のようになってさらに綺麗だろうな~
ドッコ沼を通り過ぎ、道なりに進んでいくと、五郎岳と三郎岳・目玉沼方面の分岐に出ました。地蔵山の方に行きたかったので、三郎岳・目玉沼方面へ行ってみましたが、雪のせいで道がよくわからず森の中で軽く迷子に。
ちゃんと戻れるように印をつけたり、写真を撮ったりしながら進んでいくと、なんとか正規の散策路に出られてほっと一安心。
そこからすぐに目玉沼に出ましたが、雪と氷に覆われてなかなかそれとはわからず、沼からひょっこり突き出ていた標識を見て気づきました。
この時期になっても山の中はまだ冬眠中のようです。
目玉沼から少し歩くと片貝沼に到着。沼の向こうに三宝荒神山が聳えそれが湖面に映って美しい。
この一帯は開けた場所で湖畔には休憩できる東屋や、近くにホテルなどもあり観光地という感じです。
ここの東屋で、コンビニで買ってきたお昼ご飯を食べることにしました。
まわりには誰の姿もなく、雄大な景色と自然の音のみの空間で贅沢なランチタイムを過ごすことができました。
ザンゲ坂を乗り越え地蔵山山頂に登頂
片貝沼の脇を回ってホテルやゲレンデのある方へ抜けていきます。ここまで来るとこの辺りで働いているらしいスタッフの人の姿が数人見えましたが、どこもクローズしているせいか、観光客は誰もいません。
ここから車道が続いていたのでそちらに行ってみました。地蔵山方面に道なりに進んでいくと大きなゲレンデ(樹氷原コース)に出て、下の方には蔵王ロープウェイの樹氷駅が見えました。
ここで、同じツアーのご夫婦に遭遇。山の麓に鴫の谷地沼という沼があるのですが、そこからずっと登ってきたらしい。あとでわかりましたが、かなりの距離です。
このゲレンデを登っていけば地蔵山ですが、パッと見る限りけっこう距離がありそうな感じ。しかも山頂直下の坂はなかなかの急登ぶりです。
この坂はザンゲ坂という名前で、その名の由来は、このあたりの樹氷が雪が重くて頭を下げている姿に見えるからというものらしいのですが、ぐったりしながらここを登る人間にも充分あてはまる名前だと思います。しかし、せっかくここまで来たし行けるところまで行ってみることにしました。
少し先までご夫婦も一緒に登ってきましたが途中の分岐で下山。確かにあの距離を登ってきたのなら、この先に待ち受ける急登はちょっと嫌になるのもわかります。
止まっているリフト乗り場で少し休憩。蔵王の風景が一望できました。
そして最後の登りへ。道の脇にはスキーヤーのために頂上から麓までどれくらいの距離だかわかる番号札が立ってるのですが、それをみながらあと何個分だと自分を励ましながら登って行きました。これ、坂道だったから良かったものの(自分の歩幅で歩けるから)、ずっと階段だったらかなりバテていたかもしれない。
また、いたるところに雪は残っていたものの適度にしまっていて歩きやすかったのも助かりました。長野の四阿山に登った時はズボズボ沈んで泣きそうな思いをしましたが、それに比べればまだ楽な登りだったと思います。
昨日ロープウェイで来た地蔵尊に到着。
ここから更に右側の山道を登っていくと15分ほどで地蔵山の山頂に至ります。しばらく雪の斜面を進むと岩がゴロゴロした道になりほどなく登頂。山頂はとても開けていて、ここから見る限り熊野岳までなだらなか稜線を歩くことが出来そうです。
地蔵山山頂から蔵王温泉まで
山頂で少し時間をすごしてから下山開始。地蔵尊に別れを告げ、登ってきた樹氷原コースを下っていきます。
途中、閉まっている樹氷駅でおやつタイムをしさらに下っていきますが、これが行けども行けども終わらない。陽はだんだん傾きいいかげんうんざりしてきたころやっと麓が見えてきました。山頂から蔵王温泉街までざっと2時間ちょっと。
基本的にゲレンデを下ってくるので見渡しもいいし、道に迷うこともないのですが、やっぱりこの道のりはロープウェイを使いそこで浮いた時間を山頂で過ごしたほうがいい気がしました。とはいえ、今回は運休だったので仕方ない・・。
温泉街について、まずはコンビニでビールを買い乾杯。今日は約7時間の山歩きでした。いや~よく歩きました。
ビールを飲み干しホテルに戻ってさっそく温泉へ。この時も空いていてのんびりと疲れを取ることが出来ました。下りで疲れた足もこのひと風呂でかなり回復。温泉の力はやっぱりすごいですね。
少し休んで夕食。よく歩いたのでお腹もペコペコ。美味しくいただきました。