磐梯山と五色沼トレッキング記#1
日本百名山磐梯山登頂と神秘の湖沼群五色沼
2014年7月。福島の日本百名山磐梯山と裏磐梯の五色沼のトレッキング記。磐梯山のトレッキングは、八方台登山口からスタートし中ノ湯経由で山頂まで。天気も良く、頂からは猪苗代湖や桧原湖を含む360度の絶景が見渡せた。磐梯山の麓、裏磐梯に点在する湖沼群の五色沼は、静かな森の中に青や緑、赤などの神秘的な色の水をたたえる絵のような風景。宿泊は五色沼のほとりにある星野リゾート裏磐梯ホテル(現在の裏磐梯レイクリゾート)で、赤褐色の温泉を堪能した。
このトレッキング記では、八方台登山口から山頂までのルートを写真満載で詳しく紹介しています。
1日目:新宿~裏磐梯
新宿から星野リゾート裏磐梯ホテルへ
2泊3日で福島の磐梯高原にある桧原湖畔猫魔温泉へ行ってきました。
前回の長野の四阿高原に続き、今回も、ホテルと往復の交通だけついているフリーツアーを利用。
7時半に新宿を出発し、上野経由で8時半に東京を脱出。途中トイレ休憩をはさみ、猪苗代湖のほとりにある「世界のガラス館」のレストラン「猪苗代地ビール館」で自由昼食。レストランからは、青い水田の向こうに日本百名山の磐梯山が綺麗に見えました。
そこから再びホテルに向かい、14時すぎに今日から2泊する「星野リゾート 裏磐梯ホテル(現在は裏磐梯レイクリゾート 本館 五色の森(旧:裏磐梯猫魔ホテル))」に到着。見晴らしのいい桧原湖に面した高台に建っていて、駐車場からは裏側の磐梯山が見えます。
ロビーでスタッフの簡単な説明を受け、部屋に向かいます。「星野リゾート」というと最近なにかと話題のホテルですが、建物自体はよくある普通のリゾートホテルという印象。でもスタッフの感じはとてもよく、通りすがる度にみな笑顔を向けて挨拶してくれます。
今回の部屋はツインルームでしたがとても広く、窓も大きいので開放感がありました。私的には温泉に来たら和室がいいのですが、そもそもホテルだし、そういうプランだし仕方ない。
これからの3日間、ウワサの星野リゾートを堪能したいと思います。
磐梯朝日国立公園について
今回の旅行で訪れた磐梯山や五色沼、宿泊した星野リゾート裏磐梯ホテルは、磐梯朝日国立公園にあります。まずはこの国立公園についてご紹介しましょう。
磐梯朝日国立公園のあらまし
ここ磐梯朝日国立公園は、過去に大きな噴火をした磐梯山、大小多数の湖沼の眺めが美しい裏磐梯、猪苗代湖、出羽三山、朝日・飯豊連峰の山々など、山と森と湖に恵まれた国立公園として、1950年9月に指定されました。陸域に指定された国立公園としては、我が国で3番目の大きさです。豊かな自然環境に恵まれた国立公園にはツキノワグマやカモシカなど多くの動植物が生息・生育しております。この一帯は国立公園の利用拠点であり五色沼自然探勝路の入口として、ビジターセンターや遊歩道などが整備されております。(案内板より)
裏磐梯周辺の自然環境
磐梯山は、昔から、山麓の人々に豊かな水をはじめ、さまざまな自然の恵みを与えてきました。しかし、明治21年(1888年)の夏、突然、小磐梯山(標高約1800m)が水蒸気爆発により噴火・崩壊し、470人以上もの尊い命が奪われました。また、この火山活動により発生した岩屑なだれが川を堰き止め、大小300以上の湖沼をつくりました。現在、この周辺で見ることができる美しい湖沼群と森との景観は、それ以降に自然の力によって形成されたものです。自然探勝路を利用する際は、この自然回復力を感じながら歩いてみてください。(案内板より)
特別保護地区について
ここ五色沼一帯は国立公園の「特別保護地区」に指定されており、自然環境を特に厳しく守る場所となっています。そのため、小石一つ・落ち葉一枚であっても持ち出すことができません。また、動物の捕獲や殺傷・工作物の設置・たき火等の自然環境に影響を与えるさまざまな行為も規制されています。なお、自然環境を守る国立公園の規制は、特別保護地区・特別地域(第1種、第2種、第3種)・普通地域に区分され、規制は特別保護地区が一番厳しく、普通地域になるに従って緩やかになっています。(案内板より)
五色沼について
夕食の時間まで少し時間があったので、さっそく近くを散策してみることにしました。まずは、このあたりの人気ナンバーワンの散策コース「五色沼自然探勝路」へ。
歩く前に五色沼のご紹介です。
五色沼
五色沼湖沼群は、桧原湖南岸から東に延びる3.6kmの自然探勝路のまわりに点在する大小30余りの湖沼からなります。この探勝路では10数個の沼を観察できます。この湖沼群は、桧原湖などの湖と同じく、1888(明治21)年の噴火の際生じた岩なだれによるせき止めで誕生しました。
これらの沼の多くは、磐梯山の火口付近にある銅沼に端を発する地下水を水源としております。従って火山活動によって生じる硫化水素が多量に溶け込んでいる水により、水質が酸性となっている沼もいくつかあります。また、桧原湖からの水や磐梯山の深層地下水などが混入している湖沼もあり、沼ごとに異なる多様な水質となっています。
五色沼湖沼群は、その水質や生育植物により大きく4つに区分されます。ひとつは水質の酸性が強い銅沼系で、水の色が青く透明度が高い湖沼である、るり沼・青沼・弁天沼のグループです。湖底にウカミカマゴケなどのコケ類のマットが大きく発達しているのが、これらの湖沼の特徴です。
残りの湖沼は五色沼系と呼ばれ、生育する水草の種類により、赤沼グループ、毘沙門沼・竜沼・みどろ沼グループ、弥六沼・父沼・母沼・柳沼グループに分けられます。毘沙門沼は五色沼最大の湖沼です。(案内板より)
五色沼の水の色
五色沼湖沼群は、美しい青色を基調にしてさらに幾つかの色が混ざり合い、それぞれに異なった微妙な色合いを見せてくれています。
五色沼の水には、アロフェンと呼ばれる鉱物質(アルミニウムの含水ケイ酸塩)の微粒子が大量に含まれており、これらが水中に入った太陽光を反射することで、あの美しい青色が見られるのです。また、沼の底や水草などに沈殿付着した酸化鉄により、赤褐色に見える部分もあります。
このような五色沼湖沼群の神秘的な色合いは、様々な鉱物質を含んだ性質の異なる水系の水が混ざり合うことによって作り出されているのです。(案内板より)
五色沼と遠藤現夢
五色沼湖沼群は1888(明治21)年の噴火で小磐梯が山体崩壊をし、その時生じた岩なだれが磐梯山の北麓を埋めた際に、川をせき止めてできたものです。噴火2週間後に描かれた図(図1)を見ると、この北麓に短期間に緑が戻ることは考えられなかったことでしょう。この地は国有地でしたが、明治政府は、荒廃した土地に樹林を成功させた者に土地を安く払い下げるという方策を打ち出しました。佐藤栄次郎や白井徳次、矢部長吉親子などが試みましたが、成功しませんでした。最後に1910(明治43)年頃から挑戦したのが、会津若松市出身の遠藤十次郎(現夢)でした(写真1)。彼は林学博士の中村弥六の指導の下、アカマツを中心に10万本以上を植林しました。必ず根付くようにと、一ヶ所にまとめて2本や3本を植えました。五色沼を散策するとその2本や3本で成長しているアカマツを見ることができます(写真2)。
遠藤現夢は、五色沼の青沼の北西にある大きな岩を墓石として、今ではそこに眠っています(写真3)。また、裏磐梯高原ホテルの南側にある弥六沼という名称は、お世話になった中村弥六の名前から取ったものです。(案内板より)
コース説明
「五色沼」とは大小30ほどのさまざまな美しい色彩をもつ湖沼群の総称です。これらを巡る五色自然探勝路は、裏磐梯ビジターセンターから桧原湖付近までの全長3.6kmの比較的平坦なコースです。所要時間は約1時間30分です。(案内板より)
五色沼自然探勝路散策
五色沼自然探勝路は、ホテルを出てすぐ向かい側にある「裏磐梯物産館」の裏からスタート。こちらはコースの西口にあたります。ゴールの東口まで抜けると1時間以上かかるので、今日は行けるところまで行って引き返すことにしました。
コースの入り口に柳沼や母沼などがあり、水面が鏡のようになっていてとても美しい。
そこから森の中の小路を歩いていきますが、思いのほか湿気があって暑い。熊も出没するらしいのですが、人の行き来がけっこうあるのであまり危険な雰囲気は感じませんでした。
しばらく進むと木々の間から青い水が見え始めました。五色沼の中で最も透明度が高いという青沼です。その青さに知らず知らず感嘆の声が漏れてしまいました。
沼のほとりに展望台があったのでそこまで下りてみます。ぐっと水面が近くなり、その青さが目にしみる。
写真の撮り甲斐もあり、東京からの長距離移動で疲れていましたが、一気にテンションが上がってきました。
青沼を過ぎると水の流れる音が聞こえてきました。道を小さな小川が横切り、坂の下に向かって流れ落ちていきます。その流れの上流にるり沼がありました。
本道から少しわき道に入るので見過ごしてしまいそうですが(実際通り過ぎている人がいた)、道からるり沼のほとりにある木のベンチがかろうじて見えるので、注意していればわかると思います。
そのベンチのところまで少し上ると、エメラルドグリーンをしたるり沼が一望できました。沼の向こうには磐梯山も聳えていて、とてもいい写真スポットです。
さて、本道に戻り、左手に青沼を見ながら弁天沼に向かいます。
少しすると、道の向こうの木の間が青くなってきました。なんだかこの先にどんな風景が広がっているのかワクワクします。
そして少し行くと森が切れ、これまた涼しげな色をした弁天沼が登場。道の脇に展望台が設けられていたので上ってみると、その大きさが見て取れました。水面のいたるところから草が生えているのですが、その緑と水の青さの色合いや風景の質感というかそういうのが、まるで絵画を見ているよう。周りにいる他の観光客の間からも感嘆の声があがっていました。
この先にもまだ行きたい気持ちはありましたが、ここでタイムアップ。続きはまた後日ということで、来た道を引き返します。同じ道ですが、進む方向が変わると見える景色もちょっと違ってまた楽しい。
桧原湖
入り口の柳沼に着きましたが、すぐ近くの桧原湖に寄ってから帰ることにしました。
桧原湖
目の前にあるこの桧原湖は、誕生してから百数十年の新しい湖です。1888(明治21)年7月15日に、水蒸気爆発による噴火で、磐梯火山の山体の一つである小磐梯が崩壊し、岩のかたまりが北川に流れ下りました。これを岩なだれ(岩屑なだれ)と言います。
当時、磐梯山の北川には多くの川や沢が流れていました(図1)が、岩なだれがこれらをせき止め、桧原湖をはじめとする300余りの湖沼が誕生しました(図2)。
湖は一瞬にできたのではなく、少しずつ水位を増していったことが、この噴火から1週間後の右下の写真からもわかります。この写真は現在の雄子沢周辺で撮影されたもので、手前の山は京ヶ森です。
湖の手前側には多くの小島を見ることができますが、これらはその時の噴火でできた流れ山という地形です。流れ山とは、崩壊した山体のふもとに岩なだれが流れ下って堆積してできたもので、丸い小山のような形をしています。流れ山は、これらの小島だけではなく、磐梯山の北側に数百ほど存在していますが、多くは木々に覆われているため、ここから見つけることは難しいでしょう。1950(昭和25)年、この美しい景観により磐梯山周辺地域は国立公園の指定を受けました。(案内板より)
桧原湖はぐっと観光地の色が増し、桟橋にはカラフルなボートがたくさんスタンバイしています。湖のほとりには大きな駐車場も完備され、いくつかのお土産屋さんも並んでいました。湖岸からは島巡りの船も出ているようです。
特にこれといって惹かれるものがなかったので、10分ほどぶらぶらしてホテルに戻りました。
星野リゾート裏磐梯ホテルの温泉と夕食
ホテルに戻った後は、夕食の前に温泉です。広い脱衣所と内湯があり、内湯から階段を下りて露天風呂へ。ここのお湯は鉄分が多く含まれているということで赤褐色をしています。お風呂は森に囲まれ、その向こうには桧原湖が見えました。お湯はぬるめなので、森を抜ける風に吹かれながらゆっくり入ることができます。箱根の立ち寄り湯「箱根湯寮」に行った時も思いましたが、森の中の露天風呂は本当に気持ちいい。
もう少しボーっとしていたかったですが、お腹もすいたので一旦部屋に戻りホテルのレストランに向かいました。
夕食は東北地方の料理が並ぶバイキング。メインは牛タンのパイ包み焼きということでさっそくいただきにいくと、スタッフが綺麗に盛り付けてくれました。さらにあとから、出来立ての海鮮のポットパイやデザートも追加。
牛タンは柔らかく、ポットパイは中のクリームシチューが濃厚で美味しい。さらに芋煮や漬物などもいけました。
もう少し種類があればいいなと思いましたが、ひとつひとつの味はよかったです。
お腹いっぱいになり部屋に戻る途中、廊下の窓から外を見ると、夕日色に染まる桧原湖と磐梯山が見えました。