北アルプスのトレッキング(登山)記。初春のまだ雪が残る日本最大級の北アルプス涸沢カールを登り、3000m級の穂高連峰に囲まれた人気の涸沢ヒュッテに宿泊。上高地の明神池や河童橋、田代湖まで足を伸ばした快晴に恵まれたトレッキングは、絶景の連続。
2008年4月28日天気快晴
飛び石のGWを有給で埋め、夜行バス込み3泊4日で、北アルプスの涸沢に行きました。
「さわやか信州号」で新宿(23時発)から上高地バスターミナル(6時着)まで、およそ7時間の移動です。運賃は6000円で、車内はけっこうすいていました。しかし、混雑期になると何台も連なり、いずれも満席になるそうです。
2回のトイレ休憩を経て、早朝6時上高地に着きました。まだ薄暗いですが、いい天気になりそうです。雪も残っているのでレインウェアを着込み、入山届けを出していざ出発。
さわやかな高原の空気の中、森の中の緩やかな山道を40分ほど歩くと、明神館に到着。まだ人もまばらで歩きやすいです。一時間ほど歩いて徳沢まで行くと、野生の猿がたくさん姿を現しました。人を襲うこともなく、逃げることもなく、のんびりと過ごしています。ここには、氷壁の宿 徳沢園があり、広い芝生のテント場も広がっています。
徳沢から横尾までも、まだなだらかな山道が続いていました。しかし、いつもでもこんなになだらかだと、最後がきつそうです。うわさでは、涸沢ヒュッテまでの涸沢カールは、このあたりでもキツイ登りだと聞いていたのでちょっとドキドキです。
横尾まで約一時間で到着。ここで少し休憩し、梓川に架かる横尾大橋を渡ってさらに奥地へ進みます。それにしても、流れる水のきれいなこと。川底がはっきりと見えました。
ゴツゴツした岩がころがる川沿いに出ました。その上を歩いていくのですが、雪が被っているので岩と岩の間の隙間が覆われ見えません。雪を踏み抜いて落ちないように気をつけながら慎重に歩きます。
そこを過ぎると少しの急登があり、だんだんと本格的な山道になっていきました。左手には屏風岩が姿を現し、森を抜けると、いよいよ涸沢カールの登りが始まります。そしてここから一気に雪の量が増え、一面銀世界の風景に一変しました。雪はアイスバーン状態ではないので、まだアイゼンは必要ありません。水分を含んだ粗目のような雪に足をとられながら一歩一歩登っていきます。
遮るもののない日本最大級の涸沢カールでは、太陽の日差しが雪に反射して、上から横から下から容赦なく突き刺さってきます。日焼け止め、サングラス、帽子は必須で、水も多めに持っておいたほうがいいでしょう。横尾を過ぎてからは、涸沢ヒュッテまで山小屋はなく、3,4時間ほどきつい登りを歩かなければなりません。
前日の寝不足もあり、かなり辛い登りとなりました。休んでは登り、休んでは登りを繰り返し、確実にヒュッテに近づいてはいるものの、一向にその姿が見えません。だんだん不安になってきたので、ちょうど下山してきた人に聞いてみると、
もう少し登ると見えてきて、そこから一時間くらいだよ
とのこと。まだかなりありそうです。
登っているときは、ずっと下を向いたまま歩きがちですが、たまにふと顔を上げると、すばらしい景色が広がっていました。険しい雪を被った山間を、まるで、空に向かって歩いているような感覚です。こんな風景が日本にもあったなんて知りませんでした。
ひとつの急登を越えると、やっと遠くに涸沢ヒュッテが見えました。やはり、山小屋が見えると安心するのもです。しかし、まだここから一時間がんばらないといけません。小屋でのビールを励みに、最後の力を振り絞ります。
そして、ついに、やっと、ヘロヘロになって到着。
やったー!がんばったぞ、私
さっそく受付を済ませ、そのまま小屋の「パノラマ売店」でキンキンに冷えたビールと名物のおでんで乾杯です。
うまい!
快晴の中、北アルプスの絶景に囲まれての一杯は格別です。おでんも味がしみてて最高においしい。この一瞬で、今までの辛さが吹き飛びました。
このヒュッテは、とても人気があると聞いていましたが、その理由がよくわかります。このパノラマを一望できるロケーションに、それをゆっくり眺められる広いテラス。これはクセになります。トイレも水洗で綺麗でした。
一息ついたあと、さっそく部屋へ行きました。今日は6人部屋だそうです。でも結局この日は、私たちを含め4人しか来ませんでした。おかげでゆっくりと眠ることができます。荷物を整理し、夕飯までの間、布団を敷いて一休みすることにしました。
しばらくして食事の用意が出来たとういアナウンス。もうお腹がぺこぺこです。周りのみんなも待ってましたとばかりに食堂へ向かいました。
今日のメニューは、とんかつと魚の切り身。ボリューム満点です。
かなり満腹になり、眠気も出てきましたが、まだ時間も早く、居間で山行のDVDが上映されていたのでそれをしばらく見ていました。そこでは、酒盛りする人、山話に花をさかせる人、それぞれみんな楽しそうに過ごしています。なぜか山の中に入ると、見ず知らずの人とでもすぐに仲良くなってしまうんですよね。
この夜は、泥のように眠ってしまいました。
翌朝、6時前に起床し、朝焼けに染まる山を撮影しに外へでました。
天気は雲ひとつない快晴で、風もなくそんなに寒くありません。これならカメラも凍らないし、しばらく外にいても大丈夫。小屋のすぐ目の前が絶景ポイントなので移動もラクです。すでにカメラを構えた人たちがたくさんいました。
少し待つと、雪を被った穂高連峰が徐々にピンク色に染まってきました。空と麓の暗さの間に、朝日に照らされた山頂が空間に浮かんでいるようです。その美しさに見とれながらも、夢中でシャッターを切りました。こんな神秘的な風景は、私の日常の中ではそう巡りあえません。
すっかり絶景に満足し、部屋に戻りました。
少しして朝食の時間です。オムレツに焼き魚と、朝も品数豊富でした。食堂には、サンサンと朝日が差し込んできて、今日の快晴を約束してくれているかのようです。
パッキングを済ませ、チェックアウト。外でアイゼンをつけて、一緒に行った山友は穂高へ、私は麓で写真撮影をすることにしました。約4時間ほど時間を過ごし、ヒュッテで合流。テラスには鯉のぼりがはためいていました。
それにしても雪の反射が眩しい。サングラスがなければ目を開けていられません。
もうお昼近かったので、軽く食事を済ませ、下山を開始しました。
登ってきた急斜面をアイゼンをつけたまま、雪を踏みしめ下りていきます。背中から太陽の日差しがあたり暑いくらいです。
水を含んだ柔らかい雪の長い下りは、滑ったり埋まったりと思った以上にきつく、足の裏に豆ができてしまいました。
そして斜面を降りた後の、これまた長い平坦な山道は、疲労に追い討ちをかけ、歩くスピードも遅くなっていきます。そのため、日も暮れ始め、体力的にも途中で力尽き、最終目的地の上高地まで行くのは諦め、途中の明神池の明神館に一泊することにしました。
部屋は相部屋で一人8000円。二段ベッドが6つならんだ部屋でしたが、結局他に誰も来ず、私たちだけの貸切になりました。
荷物を置き、とりあえずお風呂へ直行。山の上では入浴できないので、下山後のお風呂は本当に気持ちいいものです。広い湯船で体を伸ばすと、疲れがドーっと流れていく感じです。お風呂も貸切だったので、ゆっくりと疲れを取ることができました。
すっかり生き返ったあとは、楽しみの夕食です。これまたおいしそうな料理が大きなテーブルに並んでいました。さっそくビールで乾杯し、いただきます。とんかつ、てんぷら、煮物、蕎麦…たくさんの料理がありますが、その中でも、このあたりの名物あゆの塩焼きは絶品でした。
夕食のあと、少し宿の近くを散策してみました。林の中を通り抜け、梓川に架かる明神橋を渡り、明神池がある神社まで。薄暗い中にオレンジ色の灯を灯した旅館が数件あり、とても雰囲気のいい場所です。明日また改めて立ち寄ることにし、宿へ戻りました。
今日も快晴。宿からは明神岳が目の前に綺麗に見えました。7時の朝食後、パッキングをし出発。まずは、昨日訪れた明神池に行きました。入るのに300円払います。ちなみにここは、6時から開いているそうです。
木の間を抜けると、鏡のような池が見えてきました。まだ早朝なので風もなく、シンと静まり返っています。風光明媚とはこのことだというような、完璧な風景です。今回ここへ来るまで存在を知りませんでしたが、かなり美しい景色が見れるのでオススメです。
あまりの美しさに結構な時間を過ごしてしまいました。
明神池から治山林道を通り、一路上高地へ向かいます。このコースは行きの道とは梓川を挟んで反対側です。道は歩きやすく整備されていて、木道も敷かれています。ここまで来ると、登山者ではない観光客の姿も多く見られるようになりました。
しばらく森の中を歩いていくと、梓川の向こう側に焼岳が姿を表します。やっぱり雪を被った山は青空に映えて美しい。途中、野生の猿とも遭遇しながら、河童橋まで着きました。時間は11時前です。さすがにたくさんの観光客が写真を撮ったり、景色を眺めたり、休憩したりしていました。
私たちはそのまま上高地のバスターミナルまで行き、帰りのバスのチケットを買いました。
ちょっと疲れていましたが、まだ時間があったので、そこから一時間くらいの場所にある田代湖まで行ってみることにしました。バスターミナルの脇から梓川沿いに出て、道なりに歩いていきます。20分ほどで田代橋に着き、そこから林道に入ります。細い道を逆からくるたくさんの観光客とすれ違いながら、やっと田代湖に到着。これまた鏡のような池が広がっていました。なんだか上高地の風景を見ていると、カナダで見た景色を思い出します。それくらい日本離れした印象を受けました。
ここから大正池まで1Kちょっとでしたが、時間がないので、折り返しバスターミナルへ戻りました。ちょうどお昼時だったのでレストランで食事を済ませ、帰りの身支度をし、集合時間までアイスクリームを食べながら時間つぶし。14時発のバスで新宿まで帰りました。着いたのは19時前で早かったです。
--今回の山行で、超初心者が思ったこと--
この時期、GWで超人気の涸沢だったにも関わらず、天気にも恵まれ山小屋も余裕があり、快適な山行をすることができました。
上高地の麓はもうほとんど雪はなく、天気のいい昼間は暑いくらいでしたが、横尾からは、登るにつれ、膝までうまるくらいの雪が残っています。そのため、冬山の装備が必要です。また涸沢カールの登りは長くてきつく、日差しを遮る場所がないので、日焼け止め対策と水の確保は十分にしておきましょう。
また、涸沢ヒュッテまではアイゼンはなくても行けますが(下りは途中までつけました)、そこから穂高へ登る場合は、ピッケル&アイゼンは必要です。
上高地からはかなりの距離があるので、時間に余裕をもった行動をしたほうがいいと思いました。また横尾~涸沢ヒュッテ間には山小屋はありません。水の確保は両小屋でしておきましょう。ちなみに、横尾の山小屋は、現在工事中で60人しか泊まれず、宿泊には予約が必要とのことです。
最後に、涸沢ヒュッテにお泊りの際は、ぜひ名物のおでんをどうぞ。絶景を見ながらのあつあつおでんは最高です。
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