2014年9月。奥塩原元湯温泉と塩原自然研究路トレッキング記。山奥の行き止まりにある奥塩原の秘湯の宿「元泉館」に宿泊し、日光国立公園にある日本で最初に整備された塩原自然研究路をトレッキング。新湯温泉神社から富士山頂を経由して大沼園地、ヨシ沼を散策した。硫黄の香りの白濁した温泉は、源泉架け流しで新鮮そのもの。宿にある複数のお風呂と新湯の狢の湯で良質の温泉を満喫した。
このトレッキング記では、新湯温泉神社から山頂までのルートを写真満載で詳しく紹介しています。
2泊3日で、奥塩原元湯温泉と塩原自然研究路のトレッキングに行ってきました。
今回も、往復のバスと宿だけついたフリーツアーを利用。
宿泊は、秘湯の宿として人気の高い、塩原元湯温泉 秘湯の宿 元泉館に2連泊です。
新宿を8時半に出発し、いくつかのポイントでお客さんをピックアップしながら元湯を目指します。
トイレ休憩を挟んで、12時すぎ、那須塩原の林檎庵というお店でランチタイム。
あまりお腹が空いていなかったので、このお店名物のアップルパイだけいただきました。
ゴロゴロと乗った林檎が甘酸っぱくて美味しい。
13時出発。
二つのホテルに立ち寄ってお客さんを降ろし、最後に元泉館へ向かいます。
細い山道をくねくねと進み、かなり山奥に入ったところの行き止まりに宿はありました。
目の前には赤川が流れています。
14時すぎ。チェックインを済ませ部屋へ。
今回は別館ということで、受付からちょっと離れますが、全体的に小さな宿なので問題ありません。
部屋はこじんまりとしていますが、清潔で古さは感じません。トイレも新しくウォシュレット完備。
窓からは赤川渓谷が眺められます。
まだ時間が早いので、周辺を散策してみることにしました。
ロビーに行って、明日行く予定の「塩原自然研究路」の情報を集めるためにウロウロしていると、元湯温泉についての説明書きを発見。
元湯温泉の歴史
元湯温泉の歴史は古く今から1100余年前の大同元年(806年)に如葛仙より発見されたことにはじまります。
この地には歴代の宇都宮藩主も訪れ藩の庇護のもと又、会津西街道沿いの宿場として栄え以前は「元湯千軒」といわれるほどの大賑わいでしたが、万治二年(1659年)の大地震でお湯が出なくなりました。人々は周辺地域に移り住み、八百年乃至千年に及んだ元湯繁盛は夢の如く消え去ったのです。当館の創設は明治17年で現在では、静かな赤川の渓沿いに三軒の旅館が佇んでいます。毎年九月に模催される「塩原温泉湯祭」は、当館の源泉を汲んで塩原十一湯の各祭壇に分湯する儀式で、いかにも湯の町塩原らしい温泉街の風情をかもし出しています。(説明書きより)
なるほど。今の静けさからは想像できないほど、昔は賑わっていたんですね~。
あとで見つけたのですが、旅館の廊下に当時の写真が飾られていました。今ほど交通の便がよくなかった当時は、山奥のこの場所までくるのも大変だったと思います。
その後、宿の番頭さんに、「塩原自然研究路」の登山口がある新湯への行き方を教えてもらったので、途中まで下見に行ってみました。
宿から100mほど行ったところにある橋を渡りそこからひたすら上り坂を登っていきます。 道は舗装され車も通れる広さですが、木々が生い茂りとても涼しく心地よい。途中、キノコやマムシなんかも見られました。
少し行くと、「上滝」と書かれた看板があったので階段を上ってみると、小さな展望台がありそこから滝が見えました。思いのほか大きく水量も多い。
階段を下りてさらに登っていくと、今度は、「赤川渓谷」という看板がありました。
地図を見ると、ここから山道が続いていて、1時間ちょっとで吊橋まで行けるらしい。今回は行きませんでしたが、宿の仲居さんに話を聞くと、約2時間半くらいで、元泉館の上にある大出館のところに出てこれるそうです。
今日はここで時間切れ。食事の前に温泉に入るために宿に引き返しました。
宿に戻って楽しみにしていたお風呂へ向かいます。
元泉館には3つの源泉があり、内2つが男女別々、ひとつが混浴(女性限定時間帯あり)です。
3つの異なる源泉(パンフレットより)
泉質は、(含硫黄ナトリウム塩化物炭酸水素塩温泉)で、3本の源泉は成分の違いにより、それぞれの効能を合計しますと、30種以上に上ります。
高尾の湯(大浴場・露天風呂)
江戸時代の名妓と謳われた二代目高尾が元湯の出身で、幼少のころは元湯の温泉にも入りました。高尾太夫にちなみまして美人の湯とされております。お風呂上りのお肌のスベスベ感をご堪能下さい。
効能:リウマチ性疾患、神経痛、運動障害(特に神経麻痺)などに。
邯鄲の湯(岩風呂)
中国の故事、邯鄲の夢にちなんでつけられました。ひと時のご入浴ですが、お客様ご自身の邯鄲の夢をお楽しみ下さい。昔から医者いらずの湯としても有名です。
効能:切り傷、胃腸病、にきび、しもやけ、火傷、慢性便秘などに。
宝の湯(檜風呂)
ある種の不妊症に効果的とされます宝の湯は、子宝に恵まれますように、との願いを込め名付けられました。旅先での転地効果も大切です。リラックスしてお入り下さい。
効能:糖尿病、婦人病、ある種の不妊症、慢性気管支炎などに。
元泉館の温泉の楽しみ方(パンフレットより)
4つのお風呂湯めぐりと飲泉、温泉おかゆ、元泉館の温泉の楽しみ方は様々です。
入浴のポイント
入浴による健康づくりも入り方次第。からだを湯に慣らしながらゆっくりと。
入浴方法
ということで、最初は、一番大きな高尾の湯(大浴場・露天風呂)に行きました。
大きな内風呂とちょっと小さめの露天風呂があり、露天風呂からは赤川渓谷を眺めることができます。
白濁した濁り湯とほのかな硫黄の香りが「温泉に来たぞ~」という気分にさせてくれる。
このときはお客さんも少なく、露天風呂でのんびりとくつろげました。
お湯はぬるめなので、渓流を眺めながらずっと入っていられます。
涼しく清らかな風に吹かれながらの温泉はやっぱり最高に気持ちいい。日本人に生まれてよかった~とつくづく思う瞬間です。
そんな幸せ顔でしばらくぼけーーっと浸かってましたが、夕食の時間が迫りお腹も鳴ってきたので、これまた楽しみのひとつの食事に向かいました。
夕食は、食事処のお座敷でいただきます。
お膳に、見るからに健康的な料理が並び、まさに山奥の温泉旅館の食事という感じ。
いい温泉に浸かり、こういう食事を食べ、周りの山を歩いていれば、いつまでも健康でいられるんだろうな~
食事が終わってしばらくしてから、今度は邯鄲の湯(岩風呂)に行ってみました。
ここは本来混浴なのですが、15時~20時半まで女性専用で入れます。
この温泉、今まで入った温泉の中でも3本の指に入るくらい気に入ったのですが、何が良いって、香りがとてもすばらしいのです。
なんというか、ハッカ系の薬草のような爽やかな香りがして、天然のアロマ風呂に入っている感じ。こちらは内湯のみですが、そのいい香りが充満する浴室で何度も深呼吸してしまいました。
お湯の温度もちょうど良く、最高にリラックスできる温泉だと思います。
お湯の素晴らしさに感動しながらお風呂から上がると、脱衣所を出たところに飲泉所があったので飲んでみました。仄かな硫黄の匂いは感じますが、冷たくてお風呂上りにはちょどいい。
効能は、糖尿病、痛風、慢性消火器病、肝臓病、便秘などに効くそうです。
いや~~邯鄲の湯、本当に感動しました。
ぜひ一度味わってもらいたいです。
朝6時半ごろ起きて、まだ入っていない宝の湯(檜風呂)に行ってみました。
こちらも白濁したお湯で、朝日が差し込んでくるせいか、3つの中で一番白いような気がします。
これで全部のお風呂に入りましたが、やっぱり邯鄲の湯が一番気に入りました。朝に女性限定の時間がないのが残念。
さて、ひとっぷろ浴びた後は朝食です。(写真撮り忘れ)
こちらのお宿では、朝食に温泉がゆを出してくれます。
普通のご飯と選べるのですが、ここはもちろん温泉がゆを注文。
温泉の香りがほんのりして、いかにも体に良さげ。
その他の料理もみんな、良さげなものばっかりです。
お代わりをしてお腹一杯いただきました。
8時40分、宿を出発。
天気は上々です。
今日は、日光国立公園にある「塩原自然研究路」のトレッキングに出かけます。
この研究路は、昭和33年に整備された日本で最初の自然研究路で、新湯富士山頂(1180m)を経由して、ビジターセンターまで抜けられます。
今回私たちは、時間と交通の関係で、途中の大沼園地まで行き、そこからヨシ沼を通って新湯に戻ることにしました。
トレッキングのスタート地点は、ここから山道を1時間ほど歩いた隣町の新湯にある新湯温泉神社。
昨日、途中までいった道をさらに進んでいきます。
しばらく登っていくと峠になり、そこからは下り坂になりました。
するとそのとき、少し先のほうで何やら動くものを発見。良く見ると、野生の猿が道路わきの森の中にいました。
ちょっとこっちを見てすぐに姿を消してしまったので写真は撮れませんでしたが、動植物のテリトリーに入っていることを実感します。
下り坂が終わると「日塩もみじライン」に合流。そこを右に行くと新湯温泉に到着です。
小さな町の中には、いたるところに共同浴場があり、崩れた山肌の「新湯爆裂噴火跡」からは煙が立ち上がっていました。
そんな風景を眺めながら、「塩原自然研究路」と書かれた道しるべにそって進んでいくと、行き止まりに新湯温泉神社の入り口がありました。道から本殿まで不ぞろいで苔むした長い石段が続いていて、ものすごく雰囲気のある昔ながらの神社という感じ。ここになら、何か昔話に出てくるような不思議なものがいても納得できそうです。
石段を登っていくと、大きな鳥居があり、その手前に研究路への分岐がありました。
もっと上にある本殿へのお参りは帰りにすることにして、登山道沿いのお地蔵さんに挨拶して先に進みます。
少し行くと、富士山頂コースと、あまり起伏のないヨシ沼コースとの分岐になります。
私たちは富士山頂コースのため左へ。
案内板には、現在地からの距離と所要時間が書かれてありました。
うっそうと茂る森林の中の細い道を少し進むと、「爆裂火口噴煙展望所」に出ました。
この場所は、今回のルートの中で一番展望がよく、塩原の綺麗な山並が一望できました。火口の下には、さきほどまでいた新湯温泉神社の麓が見えます。
爆裂火口噴煙展望所
奥塩原新湯温泉は塩原温泉郷11湯のうち最も新しく、江戸時代に元湯の大地震で退避した人々が開いた温泉です。塩原では珍しい単純酸性硫黄泉で、硫黄のにおい漂う、秘湯ムードにあふれた温泉地です。
前方に見える小屋は、温泉の結晶「湯の花」を採取している場所です。神経痛・関節痛・皮膚病に効果があると言われており、浴用剤として使用されています。(案内板より)
この展望所に行く前に「火山ガス発生中」という案内があり「立ち止まらず、速やかにお通りください」と書かれていたので、写真を数枚撮って通り抜けました。
その先はまた森の中に入ります。
なんだかこの山一帯が、あまり手の入っていない原生林という感じで、苔がむした感じを見ても、それほどたくさんの人が歩いていないような気がします。
実際、今回の山歩きの途中で会った人といえば、たったの3人でした。
これから紅葉の季節になればきっと、ものすごく綺麗な場所だからたくさん人が来るのかな?
途中、「高原火山」と書かれた案内板がありました。
高原火山
高原山は、北側の塩原火山と、南側の釈迦ヶ岳火山からできています。
今立っている場所は、塩原火山の寄生火山である富士山の中腹で、火山活動の名ごりの噴気孔があります。(案内板より)
少し行くと下り坂になって、景色全体が緑になるような森の中に出ました。
心なしか、空気が濃い感じがします。
この谷から少し急な登りがありますが、短いのでそんなにきつくありません。
そして、歩き始めて1時間、あっという間に新湯富士山頂に到着。
標高が1180mと低いため、周りは木に覆われて展望はありません。
予定よりも早くつきまだ11時すぎですが、ここで持参したおにぎりで昼食。
他には誰もいないとても静かなランチタイムでした。
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