尾瀬直行夜行バスを利用し尾瀬ヶ原と尾瀬沼をトレッキング。雨の降る中鳩待峠から東電小屋まで整備された木道を歩く。立派な山小屋の東電小屋では夕食後、ご主人による尾瀬のレクチャーがありみんなで耳を傾けた。翌朝も雨が降る中、尾瀬沼を通って大清水まで縦走。晩秋のしっとりとした尾瀬の山行の記録。
コース:鳩待峠~尾瀬ヶ原~東電小屋(泊)~尾瀬沼~大清水(入浴)
2008年9月20日天気くもり
尾瀬直行バスに乗って尾瀬国立公園のトレッキングに出かけました。幸い台風も通り過ぎ、東京では雨はあがっていました。
東京駅を21時30分に出発し、一度池袋のバスターミナルに集合。そこで受付(チケットをもらう)をして、バス2台に分かれて向かいました。
時刻は23時。
出発してすぐ消灯です。
2008年9月21日。途中一回トイレ休憩をはさみ、およそ5時間で尾瀬戸倉に到着しました。
時刻は4時すぎです。
外は真っ暗で小雨も降っていました。
今日は、鳩待峠までマイカー規制がされているため、ここでマイクロバスに乗り換えます。ゲートが5時にならないと開かないということで、それまでバスの中で待機。トイレ(無料)に行ったり、眠ったりして時間をつぶします。
4時45分、マイクロバス3台にわかれて出発。真っ暗な山道を進み、5時15分ごろに鳩待峠に到着しました。バス停の目の前にある鳩待峠休憩所にはすでにたくさんの人で賑わっていて、それぞれ朝食を食べたり身支度をしたりしています。併設されているお土産物屋さんでは食事も頼めるようでお味噌汁などを注文している人がいました。
私たちも朝食を食べ荷物を整理し、雨が降っていたのでザックにはザックカバー、自分は上下レインウェアを着込みました。
気温は思ったより寒くなく、私は半そでのTシャツの上にレインウェアのいでたちです。
まだ薄暗い中、霧に包まれた登山口を出発しました。
鳩待峠から入山し山の鼻方面に行くと、道はいきなり下り始めます。
下りはただでさえ滑りやすいのに、雨が降っているのでなおさらツルツルします。こんな始めから転がってしまっては、せっかく夜行の徹夜で来たのに元も子もありません。一歩一歩足元を確かめながら下っていきました。
しばらく行くと下りが終わり、今度は平坦な木道の道に変わります。ところどころに、綺麗な色の花や木の実が目を楽しませてくれました。
辺りはうっそうとした森に囲まれていて、ふと、尾瀬に生息している、「ツキノワグマ」 が頭をよぎりました。
視界が開けないため、木道脇の茂みに隠れていても気づきません。
とても臆病な動物なので、音をならしながら歩けば大丈夫だと聞いていましたが、
やっぱりちょっとドキドキします。
するとなにやら小さな看板が現れました。
その看板には鐘とスパナ(工具の)がぶら下がっており、熊に人間の存在を知らせるため鐘を鳴らして下さいのようなことが書かれています。
さっそく、スパナで鐘を打ってみると、カンカンと高い金属音が森に響き渡りました。
ちょっとお邪魔しますね~
と心の中で呟き、森の中を抜けていきました。
しばらく歩くと、木々の間から建物が見えてきました。
鳩待峠を出発しておよそ一時間、「山の鼻」に到着です。ここには山小屋と山の鼻ビジターセンターがあり、ビジターセンターには、尾瀬にまつわるいろいろなものが展示されています。その中に、歩荷体験コーナーがあり、実際に荷物(カラの箱)を背負うことができるのですが、その荷物の高さは相当なもので、カラでなければかなり重いでしょう。
ビジターセンターの向かい側にある無料の休憩所で少し休んだあと再び出発です。ここからいよいよ、尾瀬のメインでもある尾瀬ヶ原を歩くことになります。今までの森の中とは違い、パーッと視界が開け、
草紅葉の始まった尾瀬ヶ原が目の前に広がりました。
きたーーっ
この風景を見てこそ、尾瀬に来たという実感がわくというものです。
湿原には大小様々な沼が顔をのぞかせ、まるで鏡のように周りの景色を写しこんでいました。晴れていたらどんなに美しいだろう…と思いながらずーっと先まで続いている平坦な木道の上を歩いていきます。
雨が降っているため滑るので、木道から落っこちないようにうつむき加減で黙々と歩いると、なんだか体がユラユラと揺れいてる感じを覚えました。
へんだな…と思いながら途中の休憩所で友人と話すと、その友人も揺れている感じだということ。どうやら寝不足で、歩きながら睡魔に襲われていたようです。
木道は結構な高さがあり、幅の広い平均台のようなものなので、その上をフラフラする体でバランスをとりながら長時間歩くのはちょっと大変でした。
そうこうしているうちに、だんだんと雨も風も強くなってきたので、眠い体に気合を入れ早足で今日の山小屋へ向かいました。
8時30分、本日泊まる東電小屋に到着。チェックインは13時からなので、それまでまだかなり時間があります。
とりあえず、雨にも濡れたし寝不足でフラついていたので、山小屋の休憩所で一休みすることにしました。
熱いコーヒーを注文し、ホッと一息。他にも雨宿りがてら休憩するハイカーが数組いました。コーヒーを飲みながら、
雨が小降りになったら散歩に行こう
と外をうかがっていたのですが、いつまでたってもそんな気配はなく、結局チェックインするまでここで時間を潰してしまいました。雨でも散策している人たちもいましたが、写真が撮れないのであまり乗り気になれず
せっかく来たのにもったいないなぁ
と思いつつ、ボ~ッっと窓の外に広がる湿原を眺めていました。お昼ごはんのカレーもここで食べ、やっと時間になったので山小屋にチェックイン。
部屋は相部屋ですが、8畳の個室になっていて、今日はあと4人家族が一組来るとのこと。
山小屋の相部屋といえば、もっと大きな部屋にズラーッと並んで寝るのを想像していたので、この旅館のような個室風相部屋には感動しました。
山小屋全体もとても明るく広々としていて、今までの山小屋のイメージとは随分違います。ピカピカのフローリングの床(滑って転んだ)や2階の展望室の地デジ対応大型液晶テレビ、あつあつのお風呂、水洗トイレ…とても山の中とは思えない豪華な設備です。
大きな荷物を部屋に置き、外を見ると小ぶりになってきたので散歩に出ることにしました。
東電小屋はヨッピ橋の方にあるので、そこから見晴らしの方へ歩いていきます。
雨に濡れた木道は思った以上にすべり、私も膝でスライド、友人にいたっては、下山するまでに数回見事にひっくり返っていました。(切り株の上も要注意)
森を抜け、川を渡り、再び森を抜けるとパーッと湿原が広がります。空を見上げると、どんよりとした雨雲がゆっくりと流れて、また雨を降らし始めました。湿原の向こうに見える森まで行こうかと思いましたが、明日も通るので今日はここで引き返すことにします。
山小屋に戻って、濡れた靴やウェアを乾燥室に入れたあと、展望室でのんびりとくつろぎました。
しばらくすると、お風呂の準備ができたという館内放送が流れました。ちょうどオセロで対決していたので、決着がついてから(私の勝ち)さっそく入りに行くと、一度に4~5人は入れるくらいの広さがあるお風呂が男女ひとつづつありました。湯船にはたっぷりの熱いお湯が張られ、蛇口からも勢い良くお湯がでます。先客が一人いましたが、すぐに上がってしまったので、そのあとは貸しきり状態。環境保全のため、石鹸やシャンプーは使えませんが、頭から熱いお湯をかぶり、湯船に浸っているだけでも、十分に今日の疲れを取ってくれました。(たいして歩いてないけど)
さっぱりしたあと、再び展望室で遊んでいると、食事の用意ができたというアナウンス。待ってましたとばかり、みんな一階の食堂へ向かいます。すでにテーブルにはトレイに乗った食事がセットされ、席に着くとスタッフがお味噌汁を持ってきてくれます。
ご飯はセルフサービスでおかわり自由。自分で好きなだけよそっていいのですが、残飯を出さないためにも残すのはマナー違反なので食べられるだけよそいましょう。
お腹もいっぱいになり、眠気もでてきましたが、このあと、さっきから遊んでいる展望室で山小屋のご主人による尾瀬のレクチャーが始まります。おそらくほとんどの宿泊客が集まった中、大型テレビを使い尾瀬の自然や環境保護の取り組みなどおよそ一時間弱、ご主人の人柄あふれるお話が聞けました。
東電小屋に宿泊することがあったらぜひ参加してみてください。
時刻は20時。
消灯は21時ですが、早々にふとんにもぐりこみました。
朝5時30分。
誰に起こされるまでもなく自主的に起床。(←山に限る)
窓の外を見ると…雨
テレビにはすでに地デジによる天気予報が映し出されていて、やっぱっり雨の予報。それでも空を眺めていると、雨雲の合間にチラチラと青空がのぞいていました。
たのむ。晴れてくれ~
と半ば怨念のように唱えていると、朝食の時間を迎えました。今日の朝食は、鮭に納豆。これぞ、ザ・日本の朝食という感じです。いつもは朝からこんなに食べれないのですが、なぜだか旅行に出ると食欲が湧きます。
今日は大清水まで5~6時間の歩行予定なので、早々に食べ終え部屋に戻りパッキング。友人を待っている間展望室の窓から外をのぞくと、まだまだ雨が降っています。
たのむ。曇りでもいい、せめて止んでくれ~
さっきのお願いからグレードをさげてみましたが、どうやら聞き入れてもらえそうもありません。
6時50分出発。初めてのルートで雨ですが、これならバスの時間にも間に合うでしょう。とはいえ、何があるかわからないので、最初のうちは飛ばせるところは飛ばして歩いていきます。
昨日途中まで行った湿原までたどり着きました。たくさん降った雨のせいで、ところどころ木道が冠水しています。
しばらく歩くと湿原が終わり、森が広がってきました。その森の中に入るとすぐ、いくつもの山小屋が軒を連ねちょっとした村のような場所に出ます。ここが、尾瀬で最もにぎやかと言われる「見晴らし」です。ただ、私たちが通り過ぎたときは、ハイカーもまばらでとても静かでした。
見晴らしを通り抜けるとしばらく上り坂が続きます。最初は木道が整備されたとても歩きやすい道ですが、途中から岩がごつごつした道になり、雨の水が流れ落ちてちょっとした沢登りのような箇所も現れました。
ずんずん登っていくと、前方にかなりの数の団体さんが出現。のんびりと登っているので、しばらく進めないかなと思っていたら、どうやら「人が来たときは道を譲る」と言われているようで、どんどん迫ってくる私たちに気づくと、後方の人から前の人へ
はい、超特急の追い越し~
と、まるでリレーのように順々に叫び、次々と道を譲ってくれました。
なんとすばらしい連係プレー。
脇に整列して通り過ぎるのを待ってくれているおじさんおばさん方に追い越すごとに、
いや、すみません。
これはどうも
とお礼を言いつつ、ちょっと注目されているという気恥ずかしさもあり、言葉通り、超特急で追い越していきました。
登っていくうちに流れ落ちる水の量が多くなってきて、それをよけながらの登りがしばらく続き、ほどなく白砂峠に到着です。峠と言ってもうっそうとした森の中で、展望が開けるわけでもないので、写真を撮ってすぐ出発しました。
急な下りが少しあり、そのあとはなだらかな道がしばらくつづきます。
森の中を進むと、また突然視界が開け、湿原が現れました。それほど広くはないですが、ここにも鏡のような水面の沼がいくつかあり、目を楽しませてくれました。
この湿原からほどなく尾瀬沼湖畔の沼尻に到着します。ここには、立派な休憩所があり、尾瀬沼の景色を堪能することができます。
同時にいくつかのルートの分岐地点にもなっていて、尾瀬沼の南岸コースを行く場合は、休憩所の裏手から、北岸コースを行くには休憩所を右手に見ながら横切る形になります。
私たちは大清水に向かうので、ここからは最短ルートの南へ行きます。休憩所で写真を撮ったりして少し休んでから出発しました。
ここからは、ひたすら湖畔沿いのアップダウンのある山の斜面を歩くのですが、木々が生い茂っているので、それほど展望が開けるわけでもなく、天気も悪かったせいで、コレと言ってすごい景色を見ることはできませんでした。ただ、晴れていれば、尾瀬沼越しに燧ケ岳が見えるポイントもあるらしいです。
今回は景色は諦めて、木道から滑って沼に落ちないようにもくもくと歩いていきました。
いい加減、アップダウンに飽きてきた頃、1時間ほどして三平下に到着です。ここからは尾瀬沼も良く見え、山小屋や休憩所も充実しています。
しかし今回は、グレーの水面しか見えないので、水を補給しただけですぐに出発しました。
ここから20分ほど森の中の上りが続き、ほどなく三平峠に到着。ここも景色が広がる場所ではないため、写真だけでスルーしました。
立派な木道の緩やかな下りがしばらく続きますが、途中からは階段になり、そしてその傾斜がだんだんと急になってきます。尾瀬を歩いて初めて靴擦れをおこしてしまったくらい、長い長い急坂が続きます。
途中、木々の合間から尾瀬の山々を見下ろすポイントがありました。眼下に幾重にも重なった緑豊かな山々が広がっています。尾瀬は平坦な場所が多いので、山の中にいるという実感があまり湧きませんでしたが、こういう風景を見ると、けっこう標高もある山深い場所にきてるんだと感じます。
途中何度か滑って転びながら、いい加減この急坂に疲れてきた頃、鳩待峠の登山口にもあった種取りマットが出現しました。
大清水まではまだまだありますが、山道はここで終わり、この先からは砂利道に一変します。
ザクザクと音を立てながら、だらだらとした下り坂を歩いて行くと、一ノ瀬休憩所に到着。三平下からここまで約70分ほどかかりました。
まだ時間にも余裕があったので、足も痛いしちょっと休憩をしていくことにしました。休憩所に入るとご主人がひとりだけいて、他のお客さんはいませんでした。一息つきながら、そのご主人にクマの写真を見せてもらったり、尾瀬の話をしばらく楽しみ出発。
ここからまた1時間ほどこの下りがず~っと続き、三平下から2時間ちょっとでやっと大清水の登山口ゲートに到着しました。
この道のりはかなり長く感じます。
さて、登山が終わった後は汗を流したいので、入浴できるところを探します。といっても、大清水には建物自体数件しかなく、それはあっという間に見つかりました。
私たちが見つけた限りでは、「物見小屋」と「大清水小屋」の2軒です。私たちは、登山口側の物見小屋にしました。2軒とも、食事処やおみやげ物屋さんなども兼ねていて、帰りのバス乗り場からも近いので便利です。事前調査で「大清水には広いお風呂はない」ということを知っていましたが、果たして実際は、
そのとおり
でした。家庭用のを少し大きくした感じので、石鹸はありましたが、シャンプーなどはないので持参しましょう。(ここでは使用してOK)いわゆる大きいお風呂の温泉に入りたい場合は、戸倉まで行った方がいいです。
さっぱりとしたあとは同じ場所でお昼ごはんです。カレーうどんにまいたけご飯を注文。まいたけたっぷりのどんぶり飯はとてもおいしかったです。
そのあと、お土産屋さんを少し見てから、到着したバスに乗りこみました。戸倉経由でお客さんを乗せながら、高速に入る前にオルゴール館でトイレ休憩。その後東京に向けてひた走ります。
帰りは、降車地によって乗るバスを分けられるのですが、新宿・東京行きは、申し込み時にどちらで申し込んでも都合のいいほうで降りられました。
20時30分ごろ無事新宿に到着です。
今回は天気が悪く、写真もあまり撮れなかったので残念でしたが、クマにも会わず、怪我もせず、無事尾瀬を楽しむことが出来ました。
次回はぜひ、天気のいい日に歩いてみたいです。
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