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ブータン旅行記-#1

第五代国王の戴冠式見学と雷龍昇る秘境

タクツァン僧院

ブータン第五代国王の戴冠式を見学。国民総幸福量という独自の政策をとり、最後の秘境、桃源郷とも呼ばれるブータンの旅行記。晴れ渡った7000mを越えるブータンヒマラヤから数々の城、僧院を訪れ、ブータンの歴史や文化、僧侶たちとの触れあいを写真と共につづる。

主な訪問地:バンコク~パロ~ティンプー~戴冠式見学~ドチェラ峠(ブータンヒマラヤ)~チョモラリ展望~タクツァン僧院
旅行時期:2008年11月/利用航空会社:シンガポール航空、ドゥルックエアー/[外務省]ブータン基本情報

行程

ブータン旅行 評価:4.54.5星 -kaycom

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ブータン旅行1日目 成田~バンコク

2008年11月4日。今日からブータンの新国王戴冠式見学ツアーへ出発です。
始発の電車とリムジンバスを乗り継いで成田空港に到着。
まだ人もまばらの中、今回のツアーの添乗員Yさんと合流し、早々にチェックインを済ませました。東京組は10人、大阪組4人の計14人のツアーです。
今回のブータンまでのルートは、

成田→バンコク→コルカタ→パロ

という予定で、一日目はタイのバンコクに一泊します。
バンコクまでは、お気に入りのシンガポール航空で行けるので、飛行機の長距離移動が嫌いな私も、若干気がラクでした。今、デモでタイへの観光客が激減しているので、機内も空いていたので快適です。

シンガポール航空シンガポール航空

ほぼ定刻にバンコクに到着。
バンコクは雷雨でした。
着陸できないんじゃないかと心配していた現地のガイドさんと合流し、ホテルへ向かいます。
テレビなどでは、

バンコクでデモが発生していて混乱している

という情報が流れていますが、見たところまったくそんな気配はありませんでした。ガイドさんも言っていましたが、混乱しているのは一部だけで、みんなの生活はいつもと変わらないということです。
ホテルはとても豪華で、乗り継ぎのための宿泊にはもったいないくらいです。外は雨なので、夕食までの時間は部屋でゆっくりしていました。今日の夕食は、ホテルのレストランでタイスキです。ここで、大阪組の人たちと合流。今回も今までに増して、旅なれた人たちが多く、楽しい話が聞けそうです。

バンコクバンコク
バンコク

ブータン旅行2日目-バンコク~パロ~ティンプー

ドゥルック航空と恐怖のパロ空港

早朝3時30分にホテルを出発し、空港へ。朝食用のお弁当をもらいました。

朝食用のお弁当

ドゥルック航空のチェックインカウンターには、すでに、お坊さんや各国の観光客らしき人々で賑わっていました。
今日は、2機の飛行機がパロまで向かい、いずれも満席とのことです。
時間まで待っていると、Yさんからうれしいお知らせが。

当初、コルカタ経由だったが、パロまで直行になった

ということ。
これはラッキーです。それだけブータンでの滞在時間が増えるというもの。出入国カードを受け取って、さっそく機内に乗り込みました。小さな飛行機ですが、機内はとてもきれいでゆったりしています。

バンコクドゥルック航空

隣の席の人は、ブータンの人でした。
普段はフィリピンで働いているらしいのですが、今回の戴冠式のために帰国したそうです。その人が、親しげにキャビンアテンダントの人と話しをしていたので聞いてみると、なんと、彼の元クラスメートだとか。さらに、今回のフライトのキャプテンが従兄弟だということで、ブータンの小ささを早くも体感することになりました。

少しすると機内食が配られました。 普通に美味しかった。

ドゥルック航空

しばらく飛んでいくと、左前方にヒマラヤの山々が見えてきました。そろそろ到着です。
パロの空港は、山間のわずかな平地に作られたもので、そこの離発着は、世界で最も難しいと言われているそうです。着陸が近づくと、山が両側に迫り、その間をぬう様に飛んでいきます。そこらのジェットコースターよりスリルを味わうことができるので、怖い物好きの方は、一度試してみてください。

ドゥルック航空
ドゥルック航空

ブータンの入国審査

いよいよブータンで唯一のパロ空港に到着。とても小さな空港なので、飛行機から地面に降りて、そのまま徒歩でイミグレーションの建物に向かいます。乗ってきた人みんなが、ワクワクしているのが伝わってくる感じで、興奮気味にあちらこちらで写真撮影をしていました。

パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ

ブータン伝統建築の建物に入ると、手作り感たっぷりの木で作られたブースが3つ(4つだったかも)ほど並んでいます。そこでパスポートと出入国カードを渡して入国審査を受けるのですが、このとき、出入国カードの残りをバラで返されるので、なくさないように出国するまで大切に保管しておきましょう。
イミグレのあとはターンテーブルで荷物を受け取り、税関を通るのですが、ツアーということもありノーチェックでした。

パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ

無事、入国完了。
空港から出ると、今回のガイドのGさん(男性)とTさん(女性)が出迎えてくれました。二人とも、ブータンの民族衣装である「ゴ(男性用)」と「キラ(女性用)」を着ています。学校や仕事などのときは、この衣装の着用を義務付けられているそうなので、空港で働く人たちもみんな着ていました。

ブータンののどかな風景

車に乗り込み、さっそく出発です。戴冠式のために、各国から偉い方達がお見えになるそうで、それを迎える学生や子供たちが旗を持って沿道に連なっている場所が何箇所かありました。たまに私たちにも手を振ってくれたりして、みんなとても人懐こいです。
ここでGさんから面白い話を聞きました。

今回、インドからの要人も来るが、パロの空港は、世界の中でも最も離発着が難しい空港のひとつだから、その人たちが乗る飛行機のパイロットは、パロの空港に無事着陸するため、ブータンのパイロットの指導の下、なんども実地訓練をしていたそうです。

パロ

しばらく走ると、パロの町を一望できる小高い丘の上にきました。ここで写真ストップです。
眼下には、刈り取りが終わった茶色い田んぼが何枚も広がり、その奥の民家の軒先では、農家の人たちが脱穀をしているのが見えました。なんだか、日本の田舎の風景とそっくりです。初めてきた国なのに、なつかしい感じがしたのは私だけではなさそうでした。

パロ
パロ
パロ
パロ

国立博物館タ・ゾン

懐かしい風景を見た後は、国立博物館タ・ゾンへ向かいます。
ここはもともと、パロ・ゾンの見張りのために建てられた要塞で、1968年に国王の寄付で今の国立博物館になったそうです。
ここには、ブータンの歴史を物語る農具や民族衣装、珍しい切手などが展示されていて、中でもGさんお勧めの、諸外国から集めた歴代国王の貴重な写真は興味深かったです。昔の国王は、衣裳こそ豪華でしたが、足元を見ると裸足で、時代の流れを感じることが出来ました。

パロ
パロ
パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロパロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロパロ

映画「リトル・ブッダ」のロケ地にもなったバロ・ゾン

眼下にパロ・ゾンを見ながら坂を下り、お祭りが催される広場へ。ブータン建築の建物がひっそりと並んでいました。

パロ
パロ
パロ
パロ
パロ

その後、圧倒的な存在感を漂わす、パロ・ゾンへ行きました。真っ白な壁が日の光を受けて聳え立つ姿はまさに圧巻。映画「リトル・ブッダ」のロケ地ともなったパロの最大級の建物です。

パロ
パロ
パロ

その内部へ続く橋の上に、たくさんの僧侶が集っていました。みな赤い袈裟をまとっていて、白い城によく映えています。下は7,8歳くらいの子から上は10代半ばか、後半くらいの子まで様々で、みんな気軽に挨拶してくれました。

パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロパロ
パロパロ
パロ

中へ進むと、まさにアートと言えるような建築が並んでいます。細かい模様が描かれた深紅の欄干が渡された真っ白な壁が、いくつも折り重なるようにして青空へ聳え立っていました。その上階の欄干には、何人かの僧侶がもたれかかり、階下の僧侶と楽しそうに談笑している姿がありました。なんだか、別世界の風景を見ているような不思議な錯覚を覚えます。

パロ
パロパロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロパロ

ここでは運よく、ここに住んでいる子供の僧侶の部屋を見せてもらうことができました。小さな部屋にはところ狭しと生活用品が置かれ、壁には国王の写真も飾ってあります。こんな小さなうちから親元を離れて修行をしている子供もいるのだと、知識としては知っていましたが、実際に生活する場を見て改めて実感しました。

パロ

由緒あるカンチレバー橋

ブッダの世界を垣間見た後、パロ・ゾンの外壁を見ながら坂を下っていきます。雲も取れ、青空がのぞいていました。

パロ
パロパロ
パロ

少し下りて、パロ・ゾンへの小さなゲートをくぐるとほどなくして屋根付の橋カンチレバー橋が現れます。パロ・チュー(パロ川)に架かるその橋は、ブータンの伝統様式の橋で、ブータン各地で見ることが出来るそうです。
この橋を渡りきって、川沿いにでると、手前からパロ・チュー、カンチレバー橋、パロ・ゾン、タ・ゾンと並んだ風景を撮影できるのでお勧めです。

パロパロ
パロ
パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロ

家庭料理のエマダチ

ここから車で少し走り、パロの町で昼食です。町中に近づくにつれ、まるで何かのテーマパークかなにかのような風景が広がってきました。ブータンの伝統建築で建てられた家々はみなカラフルで、花柄などのかわいらしいペイントがされています。

またこの時期、ブータン人の食事には欠かせない唐辛子が軒先や屋根の上に干され、それも見事な色彩を放っていました。

町の一角にあるレストランに入ります。内装も外見に劣らずかわいらしい装飾が施されていました。

パロパロ

今回のメニューは、ブータン人の主食であるご飯と、数種類の副菜、そして、ブータンの家庭料理エマダチです。ブータンの食事は世界一辛いと言われていますが、エマダチはその代表的な料理のひとつです。見た目は白く、とても辛そうには見えませんが、その主な材料がチーズと唐辛子ということなので、やっぱり当然辛い。

本当に辛い。

でも、これは外国人用で、本物はまだまだこんなものじゃないとのことです。こんな辛いのを毎日食べていて体がおかしくならないのか、いったいどんな舌をしてるのか、食事の中にもブータンワールドを見た一時でした。

パロ
パロ
パロ

お祭ムードのパロの町

食事の後、パロの町を散策することになりました。集合時間を決めて、自由に歩き回ります。
パロの町は、戴冠式を祝うための五色の旗で彩られていて、建物自体が色鮮やかなのに、さらにこの旗が加わり一層華やかになっていました。通りには、民族衣装のゴやキラを着た人たちがのんびりと行きかい、放し飼いの犬たちが陽だまりで昼寝をしています。

あ~なんて平和なんだ

こういう感じの国では、みんな歩く早さもゆっくりだし、野良犬ものんびりしていたりします。でもこのとき、今までいった国の「のんびり」とは少し違う何かを感じました。

のんびりしているんだけど、何かが違う…

それは、

客引きがいない

ということ。
店の前を歩いていても、お店に入っても、商品を売ってやろうという気合の入った人にまったく会わないのです。他の国では、必ずと言っていいほど、しつこく付きまとってきたり、声をかけてきたりしました。でも、ここには一切そいうのがない。

お好きにどうぞ

という、ぜんぜん商売っ気のない商売人ばかりです。物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、そういうのが苦手な私にとってはとても心地のいいものでした。だから、他の国とは違う「のんびり感」を感じたのでしょう。
お陰で、ブータン滞在中は、そういうのに気をとられることなく町を歩くことが出来ました。

パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロ
パロパロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ
パロ

ティンプーへの道

パロの町を満喫した後は、いよいよ戴冠式の行われる首都ティンプーへ向かいます。
この戴冠式のために綺麗に整備されたという道路を快調に進んでいくと、また、旗をもった子供たちの集団が各所にいました。

道は深い山間を縫うようにはしり、道の片側は切り立った崖になっている箇所もあります。聞くと、やはり事故が起こっているようで、最近では、家族連れが乗った車ががけ下に転落したそうです。

Tさん(ドライバー)、君の腕にかかっている!

でもTさんは、運転がとても上手でそんな心配は無用でした。
何箇所かの検問を通り、1時間半ほどでティンプーに到着。私たちはツーリストということで、途中、封鎖されていた新しい道を通してくれました。観光客用の車には「ツーリスト」とかいた証明書を張っておくのですが、これは、ブータンを旅行するうえでは、なくてはならないものだそうです。

パロ

大賑わい

町に入るとさらに厳重な警戒で、いたるところに警官がいて警備や交通規制をしていました。お陰で、ホテルはすぐそこなのに、グルグルと町の中をしばらく迂回する羽目に。お祭ムードの町は、人も車もいっぱいです。車を降り、規制のテープをくぐって、やっとホテルに到着。

ティンプー
ティンプー

部屋に荷物を置いた後、夕食の時間まで同室の人と町を散策することにしました。ホテルの前の道にはたくさんのお店が軒を連ね、色とりどりの電飾で装飾がされています。そしてやはり、こんなに人がいるのに、まったく声をかけられません。外人だということで、チラチラとは見られますが、それだけです。さらに、けっこう街中を歩いたのですが、ホームレスの人を一人も見ませんでした。

国民総幸福量

ブータンの掲げる政策です。もちろん、問題も多く抱えているはずですが、この町の様子は、まさにその効果のあらわれではないでしょうか。

しばらく歩き回って、すっかり暗くなったころ、ボディチェックを待つ人の行列を発見。
近くにいた警察に

あそこに並んでください

と言われたので、なんの列が聞くと、フェスティバルが行われるとのこと。おもしろそうなので、並んで広場の中に入ってみました。すでに多くの人が、すり鉢状の会場に座っています。日も暮れどんどん気温が下がり、予定時間を結構過ぎた頃、なんとなく始まりました。ゆる~い感じの各地の踊りが次々と披露されていきます。

寒い…

こんな野外劇場での観覧は予定していなかったので、上着を着ていませんでした。寒そうにしていると、隣に座っていた親子がどこからかダンボールの切れ端を持ってきて、これに座れと、私たちにくれました。ありがたくいただき、その親子ともすっかり仲良くなりました。
夕食の時間になったのでホテルへ戻りましたが、ブータン初日から楽しい思いができました。

ティンプーティンプー

ブータン旅行3日目-ティンプー

戴冠式参加

11月6日。
今日はいよいよ、今回のツアーのメインイベント、第五代国王の戴冠式です。
私たちはそれを見学すべく、朝から民族衣装の「ゴ」と「キラ」に着替えました。ツアー参加者の中には着物を持参している人もいて、みな気合が入っています。民族衣装は自分で着れないので、ガイドさんやホテルのスタッフに着付けてもらいました。

ティンプーティンプー

ここで、キラの着方をご紹介しましょう。

  1. キラ専用のブラウスを一番下に着る。
  2. おおきな長方形の一枚布を体に巻きつけ、肩でコマと呼ばれるピンで前後の布を留める。
  3. ウエストを帯でギュギュッとしばる。(けっこうきつい)
  4. きれいな刺繍のされた上着を羽織り、胸元をブローチで留める。
  5. 袖を折り返す。
  6. 一番最初に着たブラウスの襟を少し上着から出す。
  7. ラチューと呼ばれる正装の時に使用する長い布を左肩にかける。

着心地は日本の着物の簡易版という感じで、以前、弓道で袴を着ていた私にとっては、この感覚はとてもなじみのあるものでした。男性のゴは、膝丈のスカートのようなもので、正装の際は、カムニという白い布を肩にかけます。
着替えた後、国王に献上するカタ(白くて薄い布)の渡し方を練習し、さっそく出発。

ティンプーティンプー

戴冠式の会場タシチョ・ゾンへ

せっかくなので、ホテルの外で集合写真を撮りました。すると、派手な一団で目立ったのか、外国人観光客がよってきて、ブータン人でもない私たちの写真を撮り始めました。さらに、なぜか日本の着物が人気で、着物姿の人は何枚も撮られていました。

撮影大会のあと、まだキラに慣れないので、ぎこちない歩き方で車に乗り込みます。雲ひとつない戴冠式日和の天気の下、会場となるタシチョ・ゾンへ向かいますが、その途中、町を見下ろせる高台からタシチョ・ゾンを見ると、建物の一面を覆い尽くすほどの巨大なトンドル(タンカ)が垂れ下がっていました。その中のひとつは、12年ぶり(確か)の公開ということで、とても貴重だそうです。

ティンプー
ティンプー

しかし感動もつかの間、ふと視線をずらすと、タシチョ・ゾンへつづく一本の道に、かなり長い行列ができているのが見えました。みんな今日の戴冠式を見学するために集まってきた人たちです。予想外の人の多さに、YさんもGさんも驚いて、急いで会場に向かいました。

ティンプー
ティンプー
ティンプー
ティンプー
ティンプー

タシチョ・ゾン近くの駐車場で車を降ります。残念ながら、会場内へのカメラの持ち込みは禁止という連絡が舞い込み、仕方なく車に残して向かうことになりました。これにはみんなガッカリです。
入り口へ向かう途中、タシチョ・ゾンの方から車が何台かやってきました。車内を見ると、王族の方たちが乗っていて、私も含め周りにいた人たちは大興奮。手を振ると笑顔で振り返してくれました。窓も開けっ放しで、すぐ触れそうなくらいの距離です。この無防備さ加減…なんともブータンらしい光景でした。

ついに第五代新国王が登場

さて、やっとのことで会場に入場。私たちが案内されたのは、玉座がすぐ目の前の、場所的にかなりいい席です。左側に玉座があり、正面には踊りが披露されるテープで囲われたステージがあります。
最前列で、国王も踊りもよく見えますが、床は堅い石で屋根はなく、強い日差しが容赦なく照りつけてくる屋外の会場。しかも会場内では、帽子の着用は無礼にあたるため禁止されているので、念のため持ってきたスカーフで日よけをするしかありません。みんなもいろんなものを使って日光を遮断していました。お尻に敷くものも、昨日の野外フェスティバルで学習したのでしっかり持参。数時間待機をしなければならないので、このスカーフと敷物は大いに役立ちました。

そうこうしているうちに、およそ2万人が収容できる会場はあっという間に満席になり、いよいよ開幕(?)国語であるゾンカ語で開会の挨拶のあと、国王が登場されるまでの間、ブータン各地から集まった踊り手たちによる、それぞれの地域の踊りが披露されました。
みんなこの日の晴れ舞台のために綺麗に着飾り、大勢に囲まれたステージでちょっと恥ずかしそうに踊っていました。真っ青な青空と、真っ白なゾン、そしてカラフルな民族衣装のコントラストはとてもとても美しいものでした。

時刻はお昼時。まだ国王はやってきません。
ステージでは、踊りの演目も一巡し、二度目、三度目となっています。予定では、国王は12時か1時くらいにくるだろうということなので、今のうちにお昼を食べることにしました。朝ホテルでもらった、竹で編んだブータンのランチボックスを開けます。中には、アルミホイルに包まれたジャガイモの煮込みや鶏肉、ジュースなどが入っていました。

ティンプー

お腹もいっぱいになり、またしばらく踊りを眺めていると、にわかに会場がざわめき始めました。待つこと3時間ちょっと、ついに国王の登場です。民族衣装のゴに、王族の黄色のカムニを纏った長身の男性が、会場の入り口から護衛とともに現れました。その様は、王というよりは芸能人的な華やかなオーラを放ち、集まった民衆に笑顔を向けて玉座へ向かっていきます。
国王は、そのハンサムないでたちから、諸外国の多くの女性からアプローチを受けているとのことですが、ブータンの国王はブータン人としか結婚はできないそうで、すでに恋人もいるとの噂です。

戴冠式の始まり

次々と大臣や僧侶が集まり、ブータンの宗教界のトップであるジェ・ケンポも登場です。神聖な雰囲気の中、粛々と儀式は進められていきました。

まずはジェ・ケンポによるお祈りが行われ、吉祥の物が捧げられます。今日の朝に行われたVIPのみの式で、前国王から正式に戴冠された、ブータンの国鳥であるワタリガラスをモチーフにした王冠もお披露目されましたが、今回は被りませんでした。

一通りの儀式が終わった後、選ばれた人たちが、直接国王にタカを献上しに玉座のある上段へ集まりました。その30人ほどの人たちの中に、車椅子に座ったかなり年老いたおばあさんがいました。最初は関係者かなと思ったのですが、あとで聞くと、あの人は歳が105歳で、ちょうど今年建国100年のブータンにおいて、初代国王から今回の新国王までずっと見てきた人だということで招かれたそうです。
そのおばあさんは、車椅子からなかなか立ち上がれずタカを渡せずにいたのですが、それを見た国王は自ら玉座から降り、そのおばあさんの前まで行ってタカを受け取っていました。(日本の政治家も見習えー!) おばあさんは感激のあまり感涙。

ティンプー

※写真:BHUTAN OBSERVER紙より

国王と対面!お言葉と記念品をゲット

そして、いよいよ国王と対面できるときがきました。対面と言っても、国王が会場内を練り歩き、お付の人がタカを受け取ったあと、記念のコインを渡すというものです。
でも、これがすごかった。

国王は再び自ら玉座を降り、2万人もの参列者ひとりひとりにコインを手渡していったのです。立つなという指示があったので、みんなは座ったままだったのですが、そのためにずっと腰をかがめて配っていました。さぞかし疲れるだろうと思いましたが、そんな様子は微塵も見せず、それどころか、時折かがみこんで抱擁したり、笑顔で挨拶したり…

ありえない…日本じゃ絶対ありえない

国のトップが行うその献身的な姿に私たち日本人グループは、すっかり感動させられてしまいました。
そして約一時間後、ついに私たちのグループのところへいらっしゃいました。
代表してYさんが

おめでとうございます。
お祝いするために日本から来ました。

と国王に言ったところ、

ありがとうございます。
ブータンでの滞在を楽しんで行ってください。

と、私たちに向かって言ってくれました。

きゃーー
泣きそう…

コインを受け取るとき、この言葉をかけてくれたとき、国王と見つめあった(ほんの数秒だけど)ことは一生忘れないでしょう。そのときもらった台紙付のコインは、サランラップにくるんで大事に飾ってあります。

ティンプー

日も傾きはじめ、コインを受け取った人から会場を出るように指示されました。もう少しいたかったのですが、仕方なく退場です。出た後は、歩いてホテルまで戻りました。
ホテルまで戻る途中、ビールでも買って帰ろうかと入ったお店で、戴冠式の生中継がテレビでやっていたのですが、まだたくさんいる人たちに、変わらず腰をかがめて配っている国王の姿が映っていました。

この国の王様はすごい

心からそう思いました。きっと「国の上に立つ」ということに対しての考え方が、諸外国とは根本から違うのでしょう。国民に愛されている王族だとは聞いていましたが、それも納得です。

ティンプー
ティンプー

次は、第五代国王の感動のスピーチ

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