インドの中のチベット、チベットよりもチベットらしいともいわれるインド北部のラダック旅行記。1975年まで外国人の入域が許可されなかった秘境の地。標高3500mの高地に点在するゴンパ(僧院)を現地の高僧パルダンさんの案内で巡った。中国ではなくインドに吸収されたことで破壊を免れた貴重な壁画や仏像などが多く残り、今なおチベット仏教が脈々と受け継がれている。僧院や街中にはダライラマ法王などの写真も多く飾られ、チベット本土との違いも感じられた。青空に映えるタルチョや真っ白なゴンパのチベットらしい風景、荒涼とした月世界のようなラダックらしい大地、インド系住民と牛が闊歩するインドらしい光景が混在するラダック独自の景色が広がっていた。
主な訪問地:レー(サンカル・スピトゥク)~上ラダック(シェイ・ティクセ・ストク・マトゥ・スタクナ・ヘミス・チェムレ)~下ラダック(ピヤン・バスゴ・リキル・ラマユル・アルチ・サスポル・ワンラ・マンギュ)
旅行時期:2012年9月/利用航空会社:キャセイパシフィック航空・ジェットエアウェイズ航空・全日空/[外務省]インド基本情報
ラダック旅行 評価:4.5 -kaycom
ずっと行きたくてなかなか機会に恵まれなかったラダックへ。
たまたま飲んでる席でラダックの話になり、じゃ行こうかと軽い感じであっさり決まった旅行です。
今回は3人で出発。
ペルーの旅行で知り合った友人と、旅行をアレンジしてくれたブータンの旅行でお世話になったGNHの山名さん。
まずはキャセイパシフィック航空で羽田から香港まで5時間のフライト。
チェックインのとき、カメラのバッテリー関係は手荷物にしてくれと言われるので注意。
香港で5時間ちょっとの待ち時間がありましたが、航空会社のビジネスラウンジを使えるようにしてくれたのでそこでしばらく休憩。
20時、次はジェットエアウェイズで香港からデリーまで6時間弱。
現地に着くのは23時すぎなので、今夜はこのまま空港で夜明かしです。
早朝、マクドナルドでマサラバーガーの朝ごはんをいただきましたが、パンがボロボロでイマイチ。
5時40分、再びジェットエアウェイズでレーまで約1時間半。
機内に持ち込める荷物は最低限のもので、バッテリーなどもスーツケースに入れる必要があります。
この路線は山岳フライトなのでキャンセルされることも多いらしいですが、この日は定刻通り飛んでくれました。
眼下にヒマラヤの山々を眺めながらレーに到着。到着間際は山肌が間近に迫りけっこう迫力があります。
レーの標高は約3500m。
飛行機から降りてもそんなに息苦しさは感じませんでしたが、ときたまフラッとめまいが。
でも、深呼吸と水分の補給、ゆっくりとした行動を心がけていれば大抵は大丈夫だと思います。
飛行機はほぼ満席で欧米人の旅行客が目立ちました。
ここラダックは日本人にはまだあまり知られていませんが、6月から9月までのシーズン中にはたくさんの観光客が押し寄せ、特に8月までの3か月はホテルなども取りずらいそうです。
空港で現地のガイドさん、ドライバーさんと落ち合い、まずは今日から3泊するホテル・オマセラまで。
実は、当初予定していたホテルが「もう閉めるから」という理由で泊まれなくなり、このホテルに変更になりました。
日本とは比べ物にならないくらいの強い日差しが降り注ぎ、車のフロントガラスのところでソーラーマニ車が元気よく回っています。
ホテルは町の中心からは少し離れているのですが(といっても徒歩10分くらい)、その分静かで眺めも抜群。ロビーには、ここに滞在したブラピなどの有名人の写真が飾ってありました。
着いてから花が咲き誇る庭でチャイをいただいていると、真っ青な空に虹がかかっているのを発見。
これはなんだか幸先がいい感じ。
さてチェックインというとき、山名さんがオーナーとしばし交渉してくれて、なんとスイートルームに泊まれることになりました。
部屋は二間続きでとっても広く、窓からは雪山の風景が一望。
2階だったので、慣れるまでは階段の上り下りに若干息が切れましたが、ここに3連泊できるなんてうれしすぎる!
ありがとう山名さん!
部屋に荷物を置いてからホテルで朝食。
高地に来てまだ初日なので、食べすぎは禁物。
スタッフはとても感じがよく、ニコニコで対応してくれました。
本来なら午前中は高度順応するためにゆっくり休憩なのですが、私たちの様子が「まったく大丈夫そう」ということで、日本から持ってきたお土産の日本米を持って、Hidden Himalayaへ行きました。
こちらは日本人の上甲さんという方がラダック人のご主人と営んでいる旅行会社で、彼女がまだ日本の旅行会社で働いているときチベットのツアーでお世話になりました。
山名さんとも仕事のパートナーであり、今回のラダック旅行が決まってから「会いに行くよ~」と連絡していたのです。
軽い客引きに会いながら、ホテルから歩いて10分ほど。NGOのジュレー・ラダックの前にお店はありました。
そしてその入口には見覚えのあるかわいい男の子が!ここに違いない。
みんなで中をのぞくと、すっかり日焼けした懐かしい顔が出迎えてくれました。
お久しぶり~!
とっても元気そうで、仕事も順調そう。
すっかり現地で根を下ろしているようでした。
ひととおり挨拶を交わした後、上甲さんの運転で近郊をドライブ。
荒涼としたラダックらしい風景が続く中、2年前に大規模な洪水がおきたあとも未だに残っていました。
街中へ戻る途中、明日からお世話になるパルダンさんのお寺にも寄ってみましたが残念ながらお留守。サブー村にあるのですが、とても見晴らしのいい高台でした。
気持ちの良いドライブのあと、ホテルまで送っていただいてお昼ご飯。
今回も軽めですが、このスープすっごく美味しい!
ラダッキではないですが、今後の料理も期待大。
ランチのあとは、高度順応も兼ねて近場の観光です。まずは、メインバザールの中にあるレー・ジョカンへ。
ホテルのあるチャンスパからゆっくり歩いて15分ほど。
ともするといつも通りのスピードで歩いてしまうのですが、そのたびに山名さんに「ゆっくりゆっくり(ラダック語では「クレクレ」)」と言われます。
本当に意識しないと深呼吸も忘れてしまうので特に初日は注意。
今までいろいろな高地に行って思ったのが、私の場合、最初にきちんと高山病対策をするとほとんど大丈夫だということ。
高地について1~2時間はなんともなくて油断していると、その後から症状が出る場合もあるそうなので最初が肝心です。
バザールは人で賑わっていましたが、ピーク時よりはだいぶ観光客が減ったそうです。そういえば、ところどころすでにクローズしているお店もある。
お祭りのある時はそれこそこの小さな町が人であふれるそうなので、静かなラダックに来たい場合はこの時期がおすすめ。
レー・ジョカンの入口は小さいのでちょっとわかりづらい。
お堂の鍵を開けてもらって中へ入ると、たくさんのタンカが飾られ整然とした感じ。
1957年に建てられた新しいゴンパで都会(?)にあるせいか、公民館的なゴンパという印象を受けました。
ご本尊はジョウォ・リンポチェ。
お参りのあとは建物の周りのマニ車を回しながら一周します。
久しぶりのマニ車の感触がなつかしい。
外に出ると目の前にはモスクがありました。ここにはムスリムも結構いて、たまに宗教間同士のいさかいもあるらしい。
ゴンパやタルチョのおかげですっかりチベットな気分ですが、バザールを歩いていると牛がのんびり座り込んでいたりして、こういう光景を見ると「あ~ここはインドだった」と実感するのです。
今度は車に乗ってシャンカール僧院まで移動です。
シャンカール僧院は20世紀前半に建てられ、僧房も併設された2階建てのゴンパです。
ここでの見ものは2階にあるご本尊ドゥカル(白傘蓋仏母)の像。
私たちが着くと、日本人のツアーの先客がいたのですが、なんと山名さんが以前勤めていた旅行会社のお客さんたち。添乗員の人は知らない方のようでしたが、やはりこういうところに来る旅行会社は限られているのでしょう。(私も何度も利用している)
お坊さんに鍵を開けてもらって中へ入ります。
入口手前の壁には極彩色の四天王が描かれており、来訪者を迎えてくれます。
ツアーの人たちが1階のドゥカン(僧侶たちが集まってお経を唱えたりする場所)に入ったので、入口脇の階段を上って先に2階を見学。
仏像の合間にダライラマ法王の写真が飾られていたり、本当に中国のチベット自治区とは違います。
吹き抜けの部屋を通って奥の部屋に入るとドゥカルの像がありました。このドゥカルには千の手、目、足、顔があり、白い傘を持っています。
そして足元を見ると、踏んづけられている人たちが。
これから巡るいろいろなゴンパにも描かれていますが、これは自分のエゴ(悪い心)を踏みつけているそうです。
1階に下りてドゥカンへ。
こちらには千手十一面観音像やゲルク派の開祖ツォンカパ像、まだ幼い第20代のバクラ・リンポチェの写真もありました。
先代のリンポチェが亡くなると、その生まれ変わりの子供を探すのですが、その際は捜索チームが組まれ、占いなどで子供のいる場所の候補地をあげます。
最初は、正体がバレないように各地で捜索活動を行い、これはという子供を見つけると、みんなでその子供のところへ。
そして、本物かどうかの様々なテストを行うのですが、例えば、先代のリンポチェが使っていた物を持って行って当てさせる(生まれ変わりだからそれを知っていて当然)など最後はとても現実的な方法も交えて決定するそうです。
外に出て僧房から顔を出すお坊さんと挨拶をして次へ向かいました。
次に向かったのはシャンティストゥーパ。
1985年に日本山妙法寺が建てた仏塔です。
こちらには日本人の中村行明さんという僧侶の方がいらっしゃるそうなのですが、ギターが上手でyoutubeにもその演奏をアップしているとか。元はバックパッカーで山名さんとも知り合いだそうです。
車を降りてからゆるい坂をぜーぜーいいながら登っていきます。
途中バターランプが入ったボックスがありましたが、ラダックでは、すす汚れの防止と防火のためにお堂の中ではあまり火をつけないそうです。
高台にあるのでここからの眺めは抜群。
私たちが訪れたときは曇っていたのでイマイチでしたが、晴れていたら真っ白な仏塔が青空に映えて綺麗だったことでしょう。
再び車に乗ってナムギャル・ ツェモへ。
ここもレーの町を見下ろすことができる小高い丘で、山腹にはツェモ・ゴンパなどが建っています。
ここは夕日の鑑賞でも有名な場所なのですが、今回はちょっと曇っているのでどうかなという感じ。
ゴンパには後日行くことにして、レーの町を眺めながら夕日を待ちます。
すると2人組みの男性が、なにやら丘の斜面で、パラグライダーの準備をし始めました。
まさかここから飛ぶのかと様子を見ていると、一人の男性が吹き上ってくる風をうまくとらえて上空へ。
男性はそのまま上昇気流に乗ってどんどん上に上がっていきます。
風を読むのがとても上手く、かなり長い間フワフワと飛んでいました。
丘の向こう側のちょっと突き出た岩山まで行ってみると、さらに景色がよく見え、5色のタルチョがここからゴンパまで連なっています。
下を見ると先ほどのパラグライダーが麓の空き地へ無事着陸し人だかりができていました。
しばらく岩山の先端で景色を眺めてからゴンパの方まで戻ってみると、先ほどの彼らが麓からバイクで戻ってきて再び飛ぶ準備をしています。今度はもう片方の男性が飛ぶらしい。
しかし、先に飛んだ人とくらべるとなかなかうまく風に乗れず、やっと飛んだと思ったらそのまま徐々に降りていってしまいました。
そのスキルの差から、恐らく師匠と弟子の関係ではないかと予想。
岩の陰にパラグライダーが消えていったので、私たちもお開きにしようと思ったら、弟子を飛び立たせた師匠が私たちのところへやってきました。
なにごとかと思ったら、「自分が飛んだときの写真を撮っていたらぜひくれないだろうか」と言ってきました。話を聞くとどうやら弟子が撮影にしくじったらしい。
どちら様なのか尋ねると、ニュージーランドからきたプロのパラグライダーで、ラダックでもう1週間だか10日だか、飛び立てる場所を探しながら旅をしているのだとか。
世界を旅行していると、しばしばこういうぶっとんだ人たちに会えるので面白い。
残念ながら綺麗な夕日は拝めませんでしたが、こんな素敵なものが見れたので良しとしよう。
山名さんが名刺を渡し、帰国後写真をあげる約束をして別れました。
本当はここから車でホテルへ帰るはずでしたが、みんな元気だったので目の前の坂道を下って旧市街を通り、メインバザールまで歩いていくことにしました。
黙々と下っていると、ほぼ徹夜で日本から移動してきた眠気が襲い始めました。思えば初日からよく行動したなと思います。
旧王宮の入口まで下りてくると、レーの町も間近に見下ろすことができました。
ひとつひとつの建物がよく見えます。
王宮の脇から細い路地に入るとそこが旧市街。
住民の人たちと挨拶を交わしながら進んでいきます。
ほどなくいくとメインバザールのモスクの脇に出ました。
バザールの通りは昼間よりたくさんの人で賑わっていて、野良犬(でっかい)もあちこちに。
人と犬をよけながら通りのはしで待っていた車に乗ってホテルへ戻りました。
ホテルのレストランで夕食。今日のメニューはチャイニーズです。
お昼も感動しましたが、ここのレストランのスープは美味しい!
他の料理もなかなかで、腹八分目までたっぷりいただきました。
今日は初日なので、体の酸素を大量消費するお風呂はなし。
そして山名さんからキャベジンを一人前もらい寝る前に飲みました。
山名さんによると、高山病対策として、頭が痛くなくても初日の夜に飲んで寝ると翌朝スッキリしているのだとか。
私も今回初めて聞いたので、心配な方にはおすすめです。