北アフリカのアラビアの都モロッコの旅行記。カサブランカ、マラケシュ、フェズの大都市をはじめ、アイト・ベン・ハッドゥ、サハラ砂漠なども訪れる。不思議な魅力あふれる細い路地に迷い込むと、そこまもうまったくの別世界。同じような路地がくねくねと続き、新参者の旅行者にとっては巨大な迷路で簡単には抜け出せない。町から離れアトラス山脈を越えると切り立ったトドラ渓谷が現れ、夜にはぎっしりと星の光で埋まった夜空が広がる。サハラ砂漠ではテントに泊まりラクダに乗って「月の砂漠」を歌ってみた。メルズーガ大砂丘を登ると広大な砂のうねりが続き、そこから登る太陽の光で創られる風紋の影はまさに芸術。壮大でエキゾチックなモロッコの旅を写真とともに綴る。
主な訪問地:カサブランカ~マラケシュ(フナ広場・リヤド・民家訪問)~アトラス山脈~アイト・ベン・ハッドゥ~トドラ渓谷~サハラ砂漠(ラクダ・メルズーガ大砂丘・テント泊)~フェズ(世界一の迷路・タンネリー)
旅行時期:2007年3月/利用航空会社:エミレーツ航空/[外務省]モロッコ基本情報
モロッコ旅行 評価:4.5 -kaycom
2007年3月、9日間の日程でモロッコのツアーに参加しました。今回のメンバーは10人。そして、人数が集まったので添乗員が同行することになりました。
集合は、関西国際空港のエミレーツ航空の搭乗口。そこまでは一人です。今回初めて関空に行きましたが、さすが空港税が高いだけあって広くて綺麗。でも、到着したのが夜の10時すぎで出発が23時15分だったので、ただ通り過ぎるだけに終わってしまいました。
無事、添乗員のFさんとも合流できましたが、他のメンバーはわからずじまいのまま、評判のいいエミレーツで日本を出発しました。
関空からおよそ12時間。現地時間で早朝6時すぎにドバイ到着。ここでの乗り継ぎも結構タイトで、飛行機から建物までのバスでの移動や、荷物検査などで時間を取られ、15分くらいの休憩しかありませんでした。その時間で、ちょっと空港内をみたのですが、とにかく賑やかできらびやか。石油王のお国だけあって、空港内の時計はみんなROREX。いったい街中はどうなってるのかとても興味がわきました。
ここで今回のメンバーと会うことできましたが、またすぐに出発の時間となりバラバラに。これからさらに9時間のフライトがはじまります。
長いフライトを経てカサブランカ空港に到着。いよいよモロッコに入国です。
ここで威力を発揮するのが日本のパスポート。今回も例外ではありませんでした。
入国する際の荷物検査をするために、大勢の人がひとつの列に並んで、一人一人かばんを開けさせられたり、エックス線検査をしていました。しかし、私たち日本人ツアーの番になるとノーチェック(エックス線もなし)であっという間に行列から離脱し、検査している人たちを追い越して入国することができました。ツアーということもあったと思いますが、他の人たちとのあまりの差にびっくりです。
荷物検査のあと(してないけど)、今回のスルーガイドのラシッドとアットマンに合流しました。にっこにこの笑顔でお出迎えしてくれて、日本語もペラペラ。
空港で1万円両替し、いよいよ建物の外へ。初のモロッコは快晴でした。気温もそんなに暑くなく本当に気持ちのいい空気。
車に荷物を詰め込んで、ドライバーさん含め、総勢14人でいざ出発。モロッコの街にむけて走り出しました。車窓からの景色を見た第一印象は「綺麗」。真っ青な空の下、緑の大地にオレンジや黄色の花が咲き乱れ、その間を日本並に整備された道路が貫いています。正直、私が思い描いていたモロッコの印象を完全に崩されてしまいました。これからいろいろな街を訪れますが、この「綺麗」という印象は、モロッコの旅が終わるまで変わりませんでした。
モロッコの旅は移動が長い。モロッコへ来るまでにも、すでに約1日飛行機の中で過ごしました。そして、モロッコ国内でもかなりの距離を移動します。見所いっぱいの広い国をこんな短期間で見るわけですから仕方ないのですが、本当にずーっと乗り物に乗っていた気がします。
この日は、みどころの少ないカサブランカをすっとばし、マラケシュまで移動する工程でしたが、駅への途中にあるというハッサン2世モスクへ立ち寄りました。
青い空に綺麗なタイルで飾られた白い塔が映えています。アーチをくぐって中に入ると、東京都庁の中庭のような広場が広がっていて、その周りを囲む壁は、細かいタイルでいろいろな模様が描かれています。
人目にあまりつかないようなところまで、びっしりとタイルが敷き詰められていて、どこを向いても目を楽しませてくれました。
その後、車でカサ・ボヤジャー駅へ。ここから一等列車に乗ってマラケシュまで向かいます。一等の座席は、個室の向かいがけ。椅子は柔らかいソファーで乗り心地もいいです。
マラケシュまでは3時間30分近くかかりましたが、この移動の間、車窓からの風景もさながら、ラシッドやアットマンたちともいろいろな話をし、楽しい時間を過ごすことができました。
マラケシュへ着くともうすっかり日が暮れていました。駅を出ると、たくさんの人たちが広場にも道にもあふれていました。走っている路線バスも寿司詰め状態。今日は何かのお祭か?と思うくらいどっちを向いても人人人。こんなに人がいる国だと思っていなかったので、少々面食らいました。
そういえば、ネパールのカトマンズに行ったときもこんな思いをしたような気がします。自分が東京出身なので、東京より人口過密都市はそうないだろうとタカをくくっているせいでしょう。
車へ乗り込み、今日の宿泊先のリヤドへ。旧市街のメディナのすぐ近くにありロケーションは抜群。そしてなにより、リヤドならではの建物の素晴らしさが最高です。
よく見ないとわからないくらいの小さな入り口を入って、薄暗い廊下を進むと、パーッと目の前に公園のような空間が広がります。吹き抜けの広間は、中央に小さな噴水があり、床や壁はタイルで飾られています。建物は3階建てで屋上のテラスからは街が一望できました。それぞれデザインの違う客室は広間を取り囲むように並んでいて、それぞれのドアの上には素敵なデザインのランプがあかりを灯しています。そこはまるで、物語りに出てくるような異国情緒たっぷりのお屋敷でした。
私の部屋は、壁一辺分の広さがある長細い部屋で、置かれている家具や小物などどれも本当に素敵。
モロッコにきたら、5星ホテルもいいけど、ぜひリヤドに宿泊してみてください。
リヤドで荷物を降ろした後、夕飯を食べにジャマ・エル・フナ広場へ出かけました。リヤドから歩いて10分ほどで到着。だんだん中心部へ近づいていくと、たくさんの灯かりとその手前に黒い人だかりのシルエットが浮かび上がってきました。広い広場は大勢の人で埋め尽くされ、いたるところに大道芸人を鑑賞する人のかたまりができています。
私たちはラシッドの案内で、その暗い人ごみの中をはぐれないように結構必死でついていき、屋台エリアまでたどり着きました。ここは、屋台の明かりで明るく照らされ、ヨーロッパ系の観光客と地元の人で一杯でした。モロッコでは夕食が20時過ぎから始まるらしく、まさにこれからピークという時間。そしてこれが夜中の1時くらいまで続くと言うから驚きです。
お店があれば、つきものなのが客引き。モロッコでも同様です。ただ、チュニジアやネパールに比べるととてもソフトな客引きだなと感じました。
ラシッドおすすめの屋台を数件ハシゴしました。モロッコのスープ、ハリラや魚のフライ、アラビアパン…などなど食べきれないほどの料理が並びます。飲み物は、イスラムなのでお酒は公共の場ではなかなかありませんが、ペプシvsコカコーラでは、コーラが軍配を上げていました。
その後市場を少し散策。どこもかしこも色彩豊かな景色と活気でなんとも楽しい。
そしてシメは、ラシッドの友人が営んでいるという屋台ナンバー42のオレンジジュース。これが本当においしい!
こうして、なんとも健康的な食事をし、少し散歩した後リヤドに戻りました。
朝焼けを撮影するために早起きして屋上に行ってみました。まわりに高い建物がないので、マラケシュの街を一望できます。 空には月が輝いてなんともロマンチック。明るくなってくると向こうの方にアトラス山脈も見えてきました。
屋上からの帰り、明るい中でリヤドを見ると、夜とはまったく違う雰囲気。こんな感じだったんだ。
朝ごはんは、かわいい食器と調度品が並んだ部屋でいただきます。モロッコは本当にちょっとした小物から素敵。
今日は一日マラケシュを歩き回ります。天気も良く、絶好の散歩日和。
まずは地元のパン焼き屋さんを見学しました。
モロッコでは、アラビアパンといって、平たくて丸いパンをよく食べますが、そのパンの生地を自分の家でつくり、それをパン焼き屋さんまで持ってきて焼いてもらうとうシステムがあります。見学中も小さな子供やおばあさんなどいろいろな人がパンの生地を持ってきていました。
焼き場はとても狭くて暗く、釜の手前が一段低くなっていて、そこにパン焼きのおじさんが入ってパンを焼いています。今はまだ涼しいからいいですが、夏の暑い時期は大変だろうなと思いました。
迷路のような赤い路地を歩いていると、いろいろな街角の風景が飛びこんできてまったく飽きません。
メディナを通りフナ広場へ出ると、昨日の夜とは打って変わってガランとしています。それでもところどころに、動物系の大道芸人がいました。そのうちのヘビ担当のところへよると、すぐに数人のメンバーが餌食になり、ヘビを首にまかれていました。
ちょっとした恐怖を味わった後、バヒア宮殿に向かいます。
この宮殿では見事なイスラム建築を見ることができます。中庭には、たくさんの木々が植えられていて、涼しさをかもし出していました。
この「バヒア」という名前は、一夫多妻制で複数の奥さんを持っていたご主人が一番気に入っていた奥さんの名前をとってつけたそうです。
再びメディナを進んでいきます。路地の両脇にはたくさんの小さなお店立ち並び、日本語の挨拶が飛んできます。
途中、壺焼きのお店に寄り道。小さな明り取りから差し込む光の中で、お兄さんが一生懸命薪をくべていました。
その後、映画館を発見。今は上映時間ではないようで、女性が掃除をしていました。
さらに路地の奥に歩いていきます。この先がどうなっているかわからない感じがたまりません。
しばらくするとマラケシュ博物館に到着。こちらはもと宮殿だったところで、素敵なモザイクの装飾を見ることができます。
次にベン・ユーセフのマドラサを見学。マドラサでは、実際に学生が寝泊りしていた部屋も見ることができましたが、本当に質素で当時の生活が伺えます。
この後はメディナのスークを物色。色とりどりのかわいい雑貨が所せましと並び、女子ならきっと大好きな場所でしょう。お店は、売っている品物の種類でエリアが分かれています。値切るのが基本ですが、観光客慣れしているので結構手ごわい。
そろそろお昼時になったので観光客用のレストランへ。今回入ったお店では、ボリュームたっぷりのクスクスとともに、アラビアの生演奏やベリーダンスを見ることができました。モロッコでは、ベリーダンスはとても有名ですが、イスラムの国であんなに露出度の高い衣裳を着て踊ってもいいのだろうか、という素朴な疑問が浮かびます。
おなかも一杯になったところで、アットマンの実家がこの近くにあるということで、そこに寄ることになりました。どんどん進んでいくと人も少なくなり、静かな住宅街になりました。
アットマンの家では、日本からのホームステイを受け入れていて、日本人にはなれているそうです。赤壁の間の狭い路地を進んでいくと、そのつきあたりにありました。
小さな入り口を入って廊下を通ると明るい中庭に出ます。そこで家族のみなさんが出迎えてくれました。中庭のテーブルで定番の甘いミントティーをご馳走になり、しばし雑談。ほんの少しでしたが、モロッコの家庭を垣間見ることができました。→アットマン、ありがとう!
一度リヤドに戻って少し休んでから、買い物をするためにスークに行きました。もうだんだん日も傾き涼しくなってきます。それにしても午前中とは比べ物にならないくらいの人が繰り出していました。まるで休日の竹下通りか年末のアメ横か…。歩くだけも大変です。物はたくさんあふれていて、なんでも揃うという感じでした。ただ、決して物価は安くなく、服やサンダルなんかも日本並みの値段がするものも多かったです。でも値切り次第ではかなり安くなるのでがんばり甲斐があるかも。
結構いろいろ見て周って疲れたところで、フナ広場を見渡せるテラスでお茶をすることになりました。そこは本当に眺めがよく、夕暮れ時のフナ広場を一望することができました。観光客で一杯でしたが、運よく広場をすぐ見下ろせる端っこの席に座ることができ、マラケシュの夕焼けを満喫することができました。
モロッコを旅行中、お茶をする機会がたくさんありましたが、だいたい、ミントティー、カフェオレ、リプトンが定番でした。ミントティーはとても甘く、中国茶の中にミントの葉っぱをそのまま入れて、泡がたくさん立つように高いところからコップに注ぎます。また、リプトンは紅茶のリプトンですが、モロッコでは「ティー」とは言わずみんな「リプトン」と言っていました。
さて今夜の夕食もモロッコ料理です。三角の蓋の鍋で料理するタジンなどでした。
今朝も早起きして屋上に行き、マラケシュの夜明けを撮影。
昼間は結構暑くなりますが、この時間は肌寒いくらいです。
朝食をすませ、ホテルのオーナーとお別れして出発。とても居心地の良いリヤドでした。今日は、世界遺産のアイト・ベン・ハッドゥに立ち寄りトドラ渓谷まで移動。ワゴン車に加え、アットマンが運転する乗用車の二台で向かいます。
マラケシュの郊外まで行くと、広場の向こうにアトラス山脈が連なっているのが見えました。これからあの山を越えていきます。
標高2,260メートルのティシュカ峠を越えるこのルートは、荒涼とした山道がクネクネと長時間続きます。そうなると出てくるのが車酔い。途中メンバーの2名が脱落し、アットマンの車に乗り換えて別行動となりました。普段乗り物酔いしない私も結構きつかったので、車に強い方でも酔い止めを飲んでおいたほうがいいかもしれません。途中休憩をはさみながら行きましたが、お昼ゴハンに立ち寄ったレストランに着いたころにはかなりグロッキーでした。
ランチはカスバ街道にあるレストランで、レモン味のタジン料理でした。
昼食が終わってのんびりしているとすっかり酔いもおさまりホッと一安心。世界遺産のアイト・ベン・ハッドゥに向かいます。映画の撮影でも良く使われているとても有名な場所です。遺跡の手前を流れる川を馬やロバに乗ってわたり、遺跡の頂上まで暑い日ざしを受けながら登っていくのですが、その道も土壁に囲まれた味のある風景を楽しむことができました。
頂上へ着くと、360度遠くまで見渡すことができます。茶色い乾いた大地がどこまでも続き、川沿いには青々とした木々が生い茂っていました。
モロッコにはところどころに「オアシス」がありますが、ポツンと水のある周辺だけ緑の風景になっています。「オアシス」の「オアシス」たる所以を垣間見た気がしました。
この後はひたすらカスバ街道を突っ走ります。
カスバ街道を通りぬけ、トドラ渓谷に着いたころにはとっぷりと日が暮れていました。今日は、切り立った岩壁の谷底にあるロケーション抜群のホテルに泊まります。
車を降りて空を見上げると、そびえ立つ岩壁の間から降るような星が見えました。本当に作り物かと思うくらいの満点の星空。深い谷底から見上げるこの景色は、今まで見たことのないものでした。これだけでも一見の価値あり。
もう暗いので周りの景色は見えませんが、きっとすごい場所にいることは、空を覆う、壁の黒い巨大な影から簡単に想像できました。明日、明るくなるのが楽しみです。
ホテルに入ると停電中でした。このところ旅に出ると毎回「停電」に遭遇していたので、特に驚くこともなかったのですが、やはり不便です。
夕食後、疲れていたのですが、もう一度星空がみたくてテラスに行ってみました。停電ということもあり、真っ暗で足元もおぼつかないほどでしたが、そのかわりこれでもかというくらいの星を見ることができました。
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