タクラマカン砂漠を縦断し、カシュガルからトルファンまでシルクロードを辿る新疆ウイグル自治区旅行記。各地で開催される地元色豊かなバザールや、悠久の歴史を湛える数々の遺跡、西遊記にも登場する火焔山の絶景など、生活感あふれる風景から、雄大な自然美まで楽しめた。芸術の村メルケトでは、世界無形文化遺産のドランムカムも鑑賞し、ウイグル民族の人々とのふれあいも満喫。
主な訪問地:カシュガル~メルケト~ヤルカンド~ホータン~クチャ~ウルムチ~トルファン
旅行時期:2012年4月~5月/利用航空会社:中国国際航空/[外務省]中国基本情報
新疆ウイグル自治区旅行 評価:4.0 -kaycom
2012年のゴールデンウィーク。
今回の参加者は全部で17名で、連休だけあってやっぱりいつもよりちょっと多い。
出発は羽田からの午後便だったのでとてもラク。
集合時間まで展望台に行ってみたりお店を覗いたりして時間を潰します。
13時50分。
まずは東京発組みだけで北京まで、約3時間40分のフライトです。
飛行機はオンタイムで離陸し、順調な出発となりました。
窓からは、きれいな雪山が広がっています。
機内食が一回出ますが、まあ普通。
16時半、北京着。
中国と日本の時差は一時間です。
ここからウルムチまで国内線に乗り継ぎですが、一旦荷物を受け取らないといけないので面倒くさい。
国内線の搭乗口で、大阪発組みと合流。
今回はゴールデンウィークなので、会社を休んできた若い人が多いようです。
19時45分。
国内線も遅延なく出発。
ウルムチまでは約3時間のフライトです。
24時、ウルムチに到着。
ここで現地ガイドのグリさんと合流しました。
グリさんは、八代亜紀似のウイグル人の女性です。
外に出ると、当然あたりは真っ暗でパラパラと雨が降っていました。
眠い体をひきづって、ホテルに着いたのは1時半。
明日もカシュガルまでのフライトなので、早々にベッドにもぐりこみました。
5時半にモーニングコールで起こされ、7時ホテル出発。
今日は、ウルムチからカシュガルまで天山山脈越えフライトです。
国内線は、カメラなどのリチウム電池は手荷物に入れなければならないので注意。
8時50分。
ボディチェックで足の裏まで調べられましたが、なんとか滞りなく搭乗。
これでしばらくは飛行機に乗らないので、一番心配だったフライトによるトラブルで、旅行がストップしたり遅れたりするということは今のところなくなりました。
天気はくもり。
はたして天山山脈が見れるかどうか心配でしたが、雲の上に顔を出す山々を綺麗に拝むことが出来ました。それだけ標高が高いということなのでしょう。
この風景は、飛行機の左右どちら側に座っても見られるそうです。
■動画:天山山脈フライト越え
風景を楽しみながら、隣に座った現地のお母さんにお菓子をもらったり、軽い機内食を食べたりして10時半にカシュガルに到着。
空港は思いのほか大きくて綺麗でした。
荷物もすぐに出てきて11時すぎにはバスに乗って出発。
ここでは、ウルムチのグリさんの他に、カシュガルからヤルカンドまでを担当する、同じくグリさんというガイドさんと合流。
添乗員1人、ガイド2人の計3人でのサポートです。
バスは国道314号線をコンゴル山を前方に見ながら進みます。
ウイグル自治区はイスラム圏なので、いろいろと制約があるのですが、旅行者にとって一番影響があるのが「時間」だと思います。
私もここに来るまでは知らなかったのですが、ウイグル自治区では、新疆時間というのがあり、公式の時間よりも2時間遅れています。
まあ、広大な中国で全国一律の時間というのも無理があるのですが、これを知らないと約束の時間に落ち合えないなどの危険があるので注意が必要。
さて、ウイグル旅行で最初に向かった場所は、動物市。
この市場は日曜日にだけ開かれるもので、各地から牛や羊、時にはラクダなどが運ばれてきます。
整然と繋がれた羊の姿には見た目的にかなりのインパクトがあり、今まで色々な市場に行きましたが、こういう形で売られている光景は初めて見ました。
市場には動物だけではなく屋台もいくつかあり、果物やサムサ、ラグメンなども食べられます。
かわいい子供たちにも出会え、市場好きの私としては大満足のスタートでした。
動物市でテンションがあがったあとは、カシュガルの見所のひとつ、アパク・ホージャ墓(香妃墓)を訪問。
イスラムの指導者、アパク・ホージャとその一族が眠る陵墓です。
美しいタイルの門をくぐると、礼拝堂があり、頂点に三日月を頂いたミナレットがあります。
その脇を進み、壁の中へ入ると緑のタイルが美しい香妃墓がお目見え。
庭にはバラが植えられ、ちょっとした距離ですがラクダにも乗れるらしい。
庭の壁の向こうには、一般のお墓があり、モコモコと土が盛り上がっています。
ウイグルでは、
何も持ち込まず何も持ち出さない
という考えがあるので、お墓はとても質素なものになっています。
モスクの中は写真撮影禁止なので画像はありませんが、アパク・ホージャ一族のたくさんのお墓がありました。
こちらも、色とりどりの布がかけてあるだけで、豪華な装飾はありません。天井は大きなアーチになっていて、とても開放感があります。
これが晴れていて青空だったら、さぞかしタイルの色が映えていただろうなと思いつつモスクをあとにしました。
ちょっと遅めのランチは、ウイグル料理のレストランに行きました。
建物自体がウイグルちっくで、入り口の横ではシシカバブを焼いています。
店内も異国情緒あふれる内装で、初のウイグル料理に期待が膨らみます。
真ん中の厨房ではポロ(ウイグル風ピラフ)を炊いていたり、奥ではラグメンを作っていて、いい香りがただよってきてもうお腹ぺこぺこ。
まずテーブルには、パン、ヨーグルト、ピリ辛サラダが並び、メインがくるまでこれをつまんでしのぎます。
こちらでは、パンにヨーグルトをつけて食べることがあるそうなのですが、これがなかなか合って、すっぱいヨーグルトをそのまま食べるより美味しいかも。
かなり時間がたってから、ラグメン、ポロ、シシカバブがやってきました。
ラグメンは、トマトベースのソースがかかったうどんで、ポロは、パエリアのような風味。
シシカバブは羊肉ですが、スパイスが効いてぜんぜん臭みもなくて美味しい。
私たちが食べている間にもどんどんお客さんが入ってきて大盛況。中にはテイクアウトしていく人もいました。きっと地元でも人気のお店なのでしょう。
初ウイグル料理、とっても堪能できました。
ウイグル料理のランチの後は、カシュガルの日曜バザールへ。
日曜バザールとはいうものの、毎日やってる便利な市場です。(でも、日曜には規模が少し大きくなるらしい)
立派な門をくぐりバザールの中へ入ると、アーケードになっていて雨が降っても安心。
最初はみんなで歩いて集合場所を確認します。
佇まいは、家の近くの商店街にそっくりですが、売っているものはやっぱり外国。マネキンもイスラム仕様です。
一旦解散し、自由行動。
私は装飾品などよりも食べ物系のビジュアルが好きなので、さっそく探索。一度外へ出て、大通り沿いを歩いてみました。
通りにはたくさんの人が行きかい、あちこちに人だかりを作っています。そのひとつに近づいてみると、なんと小さなサソリを売ってきました。
後でガイドさんに聞くと、漢方の材料になるのだとか。
さらに進むとなんだかいい香りがしてきました。
その匂いに誘われ煙が流れ出てくる角を曲がると屋台群を発見。
市場に来たらやっぱりコレが面白い!
狭い路地に人があふれる中、その間を縫うように歩いていくと、ワクワクする被写体が次から次へと現れます。
その中の、なんだかデローンとしたものが軒先においてある屋台で、活気あるおじさんの包丁捌きを見学していると、カメラを握り締めて眺めている私に気づいたおじさんが、そのデローンとしたものを少し切ってくれました。
おそるおそる食べてみると、塩味がきいたビールのおつまみによさそうな一品。
これもあとでガイドさんに聞いてみると、羊の頭の皮だとか・・
郷に入れば郷に従え、わたし。
あちこちで、大人も子供も赤ちゃんもみんな精力的に食事をしていました。
どこの国へ行っても、地元の人が通うバザールを訪れると、その国の魂を感じることができる気がします。
そろそろ集合時間が近づいたので、絨毯屋さんなどをのぞきながら集合場所へ戻りました。
日曜バザールのあとは、街の中心部にあるエイティガールモスクへ。
このモスクは中央アジア最大のモスクで、多いときは2万人以上の人が集まるそうです。
広い広場を横切ると、黄色いポップなモスクが現れました。
中へ入ると、ちょうど礼拝の時間で、たくさんの男性が祈りを捧げています。
奥の大きな礼拝堂の中は観光客に解放されていて、その外側でお祈りしている人の横から中へ入ることが出来ました。内部は深い緑の絨毯が敷き詰められ、柱も緑色に塗られています。
日本のお寺とは違い、お香の代わりに人々の汗臭さがなんとも印象的でした。
その他、敷地内には庭園などもあるので、暑いときは木陰で涼みに来るのもいいかもしれません。
エイティガールモスクを後にし、そのモスクの裏手にある職人街へ行きました。
通りの入り口から家具屋さんなどがありいい雰囲気です。
その家具屋さんの軒先には、ウイグル民族伝統のベビーベッドや花嫁道具の長持ちなどが置いてありましたが、どれも精巧な作りで腕の高さが伺えます。
工房の合間には、ザクロジュースのお店やナン、サムサなどの食べ物屋さんもたくさんありました。
さらに奥に行くと、本格的な職人街らしくなってきて、小さな工房が通りの両側に軒を連ね、いろいろな作業の音が聞こえてきます。
その中ほどに、日本でも紹介されたウイグル民族の楽器の工房があったので、みんなで中に入ってみました。
店内にはところ狭しと独自の形をした楽器が並んでいて、そのほとんどが弦楽器。
お店の人がそのうちのひとつを弾いてくれましたが、なんとも哀愁のだたよう美しい音です。
他にも銀細工のお店などをいろいろと覗きながら通りを進んでいき、あちらこちらで黙々と仕事をする職人さんたちにも出会えました。
カシュガルは今、ものすごい勢いで開発が進められていて、古い建物は取り壊され、近代的な高層ビルが建設されています。
職人街から一歩外に出ると、その高層ビル街がすぐにあり、古き良きカシュガルの雰囲気が残る職人街とはまったく別の世界が広がっていました。
今後開発が進んでも、この職人街だけはこのまま残って欲しいな・・
バスに少し乗って、ウイグル民族だけが暮らす旧市街へ。
街は高い塀に囲まれいて、入り口で入場料を払い中へ入ります。
急な階段を登っていくと細い路地に出ました。
その両側に民家が軒を連ねているのですが、おみやげ物屋さんなどを営んでいる家もあり、それらを覗きながら進みます。
路地はまるで迷路のようになっていて、モロッコのフェズを彷彿とさせる雰囲気。
道に迷わないように路面には目印があり、長方形の石は行き止まり、六角形の石は通り抜けられるという意味になっています。
さらに、各家のドアにはプレートが張られていて、学校に通う子供がいる家だとか、テロとか問題を起こさない家だとか、その家の状況がわかるようになっています。
なんだかなぁ・・中国の政府がやりそうなことだ。
お土産屋さんは生活している家の一角にあるので、その家の生活感などもにじみ出ていて面白い。
いくつか行きましたが、ここが一番そんな雰囲気を感じられる家でした。
さらに住民の人たちとすれ違いながら路地を進んでいき、伝統的なウイグル族の部屋を見せてくれる家を訪問。
その部屋は、天井から壁から素晴らしい装飾がされ、テーブルにはおもてなし用の食べ物が置かれていました。
窓からは気持ちの良い風が入ってきて、きっと暑い夏でも部屋の中は涼しいのでしょう。
路地で遊ぶ子供たちと挨拶を交わしながら旧市街を後にしましたが、ここは開発が進むカシュガルの中で、職人街とともにウイグルの雰囲気を感じられる場所のひとつです。
職人街で働く人たちの中には、ここで暮らしている人も多いとか。
ウイグルではいろいろと民族間の問題が起きていますが、現地では、ウイグル民族と漢民族は通う学校も別だし、普段行くお店も別。
ウイグルの人たちは自分たちが「少数民族」と呼ばれるのがあまり好きではなく、コーランの教えを守り、ウイグル人同士で結婚し自分たちの宗教と民族を守るようにしているそうです。
本日の観光はこれで終了。今日のホテルへ向かいます。
今日のホテルは元イギリス領事館というQINIBAGH HOTEL(チニバグホテル)。
ウイグル語で「果樹園」という意味だそうです。
爽やかな色合いの部屋からはカシュガルの町が一望できました。
私たちの時間では18時すぎですが、ウイグルではそれより2時間遅れているので、外はまだ明るい。
部屋で少し休憩してから、別棟にあるレストランで夕食です。
個室に円卓が置かれているのですが、壁や天井の内装がとても豪華。これは元イギリス領事館だったころの名残なのでしょうか?
メニューは普通の中華料理ですが、レストランでは冷たいビールやお酒も飲めるので旅行者にとってはありがたい。
一通り食べたところで、今回のツアー参加者で自己紹介。
シルクロードに憧れて来たという人が多かったですが、みんなウルムチやカシュガルの開発振りには驚いていました。
また、やはり今回も、いろいろと面白い人たちがいて、今後楽しい旅になっていきました。