主な訪問地:ナムチェバザール~シャンボチェの丘~ホテルエベレストビュー~クムジュン
ナムチェバザールからシャンボチェの丘までの急登を登り緩やかなカーブを曲がると、サガルマータ国立公園の目玉クーンブ(エベレスト)山群が突然現れる。タムセルク、アマダブラム、ローツェ、ヌプツェ・・そしてエベレスト。富士山よりも高い標高3800mから眺める世界の屋根はそれより遥かに高く聳え立っていた。ホテルエベレストビューやシェルパの里クムジュンも訪れ、夜は降るような星空を堪能した。
6時起床。
カーテンを開けると今日も快晴で、朝日が当たり始めたコンデリが見えました。
7時、朝食。メニューはここに来て定番になったお粥です。
ほこりで喉を痛めていたので、刺激のない料理がうれしい。
8時半出発。
今日はいよいよ今回のツアーの折り返し地点シャンボチェ(3800m)に向かいます。
行程は2時間なので、昨日に比べれば短いですが、その分標高が高いので呼吸が苦しくなりそうです。
ロッジを出るといきなり階段の登りが始まりました。
ただでさえ階段状の登りは苦手なので、正直朝からかなりきつい。早くも息が切れます。
そしてそのまま町を抜け、シャンボチェの丘の急登に突入。細い山道はたくさんの登山客で、場所によっては渋滞していました。
さらにゾッキョなども入り乱れ、ほこりがあたりに舞い上がります。さっそく昨日買ったマスクを装着。
…苦しい
生地は薄いので普通の平坦な道や下りならいいのですが、こういう急登では(しかも空気薄い)、これだけの遮蔽物でさえ息苦しくなるようです。
すでに喉が痛かったのでずっとしていたかったのですが、仕方なく、ほこりの度合いによってつけたりはずしたりして対応しました。
コンデリ峰に抱かれたナムチェバザールの町を眺めながら頻繁に立ち止まっては休憩を繰り返し、なんとか急登を制覇。
急登が終わると一気にだだっ広いなだらかな草原地帯になります。
その草原の前方にはクーンビラ峰、右にはタムセルク、そして後ろにはコンデリが聳え、なんとも贅沢な空間。
ここで一度休憩をはさみ、ロッジに向けて最後の斜面を登ります。
左手にはシャンボチェの小さな空港も見え、丘の頂上には今日の宿、シェルパリゾートも発見。
開放感のある丘陵にはヤクがのんびり草を食べたりしていて、苦しいけど、気持ちの良い山歩きができました。
時刻は10時。
2時間の予定が1時間半でシャンボチェの丘のホテルに到着しました。
入り口を入って庭に出ると、目の前にエベレストをはじめとするクーンブ山群の山々が飛び込んできました。
パンフレットで何度も見たこのツアーのハイライト的風景です。
目の前右から、クスムカングル(6367m)、タムセルク(6608m)、アマダブラム(6812m)、ピーク38(7587m)、ローツェサル(8386m)、ローツェ(8516m)、エベレスト(8848)、ヌプツェ(7816m)、タウチェ(6542m)、チョラツェ(6440m)、クーンビラ(5761m)と連なっています。
シャンボチェの標高が3800mなので、富士山の頂上よりも高い場所から見ているわけですが、それでもこんなに高く見えるとはさすが世界の屋根です。
しばらく中にも入らず眺めていると、庭で望遠鏡を覗いていたシェルパが、女神の首飾りという意味があるアマダブラムを登る登山者を発見したとの一報が。すでに山頂直下まで来ているらしく登頂成功は間近のようです。
しかし後に、彼らによって救助要請がされることになりました。
※要請を受けて向かったヘリが墜落し救助隊員が死亡。登山者はその後向かった別のヘリで救助された。
ひとしきり感動を味わった後は中でチェックインし部屋に荷物を置きます。
部屋には電気ストーブがありましたが、使える時間が限られていました。
12時、3階にある食堂で昼食です。
ここの窓からは、エベレストをはじめとするクーンブ山群の大展望がいながらにして楽しめました。
そしてテーブルには、今までのロッジにはなかったおしゃれなセッティングがされています。というのも、今日と明日宿泊するこの宿は、エベレストシェルパリゾートという名前のロッジではなくホテルという位置づけで、今回のトレッキングの中で一番の高級宿なのです。
とはいえ、場所が場所なので、どこかのリゾート地のような豪華設備を期待してはいけません。
昼食はなんとオムライス。
ここの食事はホテル専用のコックさんが作るそうで、同行のコックさんは、私達がここに宿泊している間は休憩だそうです。
こんな空気の薄いところで、こんなハイカラな料理が食べられるとは。さすがホテルを名乗るだけあります。
さて、お腹も一杯になったところで午後は自由時間。
天気のいいうちに、さっそくカメラを担いで近くを散歩してみることにしました。ホテルの前がすぐにエベレスト街道なので、道なりに奥へと行ってみます。
少し行くと分かれ道になったので、丘の上に続いているほうに進みました。
ここの標高は3800m。少し登っただけでも息が切れます。
がんばって頂上までたどりつくと、そこには見渡す限りの絶景が広がっていました。360度遮るもののない視界の中に、ヒマラヤの山々がぐるりと囲んでいます。
丘の向こうには有名な高級ホテルのホテルエベレストビューや、クーンビラ峰の麓のクムジュン村も見えました。
■動画:360度ヒマラヤエベレスト山群
このときは、まわりには誰もいなく、この絶景を独り占めでした。
動画の中にちらりと建物が写っていましたが、緑の屋根の建物が私達が泊まったエベレストシェルパリゾートです。
しばらくここからの絶景を楽しんでいましたが、向こうの丘の方にタルチョや石碑のようなものを発見したので、次はそちらへ行ってみることにしました。
そこには石碑が三つ並んでいて、そのひとつに、「佐伯富男」と日本人の名前が彫られたプレートが取り付けてありました。
後日調べたところ、佐伯氏は南極の第1次越冬隊員の一人であり、エベレストのスキー隊に加わったときにクムジュンのシェルパと出会い、そこから交流が始まったとか。
しばらく写真を撮ったりしていると、クムジュン村から来たというシェルパの人に出会いました。
何をしているのかと聞くと、ただ散歩をしているとのこと。そして私にここから見える村や集落の名前を教えてくれました。
シェルパの男性と別れて、今度はさきほどの分かれ道のもうひとつの方へ行ってみることにしました。
丘を下り、少し戻って分岐点を右に入ります。
おそらくホテル・エベレスト・ビューへの道だろうとは思いましたが、確信は持てないので、時間を見つつ早足に進みます。
ほぼ水平の崖っぷちの道をしばらく行くと、広くなだらなかな草原に出て、その先に、やはりホテルがありました。明日みんなとお茶をしにここまで来る予定だったので、建物のほうには行かず、ちょっと手前のこいのぼりが立っているところまでにしました。
ここからは、さらに近くにエベレスト山群が見えましたが、すごい勢いで雲が出てきたのでシェルパリゾートへ戻ることにします。
来た道を歩いていると、谷底からどんどんと雲が流れ込んできて、あっという間にまわりの山々が隠れてしまいました。あと少し戻るのが遅かったら、道の先もよく見えなくなっていたでしょう。本当に山の天気というは変わりやすい。
15時。雲に包まれながらも無事到着。
お茶の時間に間に合ったので食堂へ行きます。チャイを飲みながらメンバーが提供してくれたお菓子をつまみ、みんなで旅の話などで盛り上がりました。
外はすっかり曇ってしまったので、もう出かける気にはなれず、夕食までの時間は洗濯したり、髪をお湯ですすいだり時間を潰します。
今日の泊り客は私達だけのようでとても静かでした。
18時、1階の食堂で夕食です。
食べる前に血中酸素濃度を測ると、ついに80台に突入。それでもメンバーの中では高いほうでした。
順番に計り終えると、なんだか部屋の外から奇妙な音が聞こえてきました。なんだろうと思い近づいてくる音の方を見ると、ジュージュー音を立てるステーキ皿が運ばれてきました。
その熱せられた鉄のお皿の上で焼かれていたのは、なんと水牛のハンバーグ。
焼かれながら来た見た目のハデさにメンバー一同大歓声。昼間のオムライスにも驚きましたが、さらにビックリさせてくれました。
そのお味は、同じ牛仲間でもいつも食べている牛の味とは少し違うのがわかりますが、これはこれでとてもおいしく、水牛はモッツァレラチーズだけではないのだと知りました。
大満足の夕食を終え、次は天体観測です。
夕方までは雲に覆われていた空ですが、今ではすっかり晴れているとのこと。
カメラを持って庭に出ると、見事な星空が広がっていました。
テーブルにカメラを仰向けに置き、バルブで撮影を試みます。若干ブレましたが、記念の一枚としてはいいでしょう。
冷えてきたので部屋に戻り、ホテルから支給された湯たんぽで温まりながら就寝です。
エベレストの山並みの朝焼けを撮るために6時前に起床。
ホテルから少し歩いた開けた場所で、空が焼けるまで待機します。風もないので外は思ったほど寒くなく、まっている間も辛くありませんでした。
だんだんと空が明るくなり、コンデリの山頂に太陽の光が当たり始めました。まだ深い真っ青な空に白い頂が輝いています。
やはり早朝の山は天気も良くて気持ちがいい。
その後もしばらく待ちましたが、赤く朝焼けはしなかったので、ひとしきり写真を撮ってからホテルに戻りました。
中へ入ると、食堂の椅子の上でこのホテルの番犬のヒマラヤ犬がいびきをかいて眠っていました。
あまりにかわいかったので動画で撮影。
■動画:いびきをかいて眠るヒマラヤ犬
7時、朝食。
ホテルの朝食もお粥でした。
9時出発。
今日は、この近くを散策します。まず昨日登った丘から小さく見えたホテルエベレストビューにお茶をしに行き、そのあとシェルパ族の里クムジュン村へ訪問です。
今日も快晴で、歩き始めると太陽の熱でホカホカです。
昨日も通った道ですが、途中、ヤクが仲良く水を飲んでいたり、小さな花が咲いていたりまったく飽きません。
20分ほどゆるやかな道をのんびり歩き、標高3880mのホテルエベレストビューに到着。エベレストを望む一等地に立派な建物が堂々と建っています。
このホテルは日本人が建てたもので世界一標高が高い場所にあります。
建物の中に入り、反対側にあるテラスに出ると、目の前にヒマラヤの山々が現れました。
タムセルクの横には、今まで隠れていて少ししか見えなかったカンテガも出現。
テラスにはすでに何組かの観光客がいてお茶を飲んでいます。私達も空いている席に着き好きなものを注文。
そのとき同じメンバーの一人が、
ナムチェでピザをご馳走になったから
とケーキをご馳走してくれました。
エベレストを見ながら優雅にケーキと紅茶をいただくなんて、人生生きていてなかなかできない贅沢です。
ここからはこのあたりで一番大きなタンボチェゴンパのあるタンボチェの村も遠くに見えました。
タンボチェの少し手前からゴーキョピークとカラパタールの分岐になり、エベレストBCへはカラパタール方面へ進むことになります。
しばらくここからの展望とお茶を楽しんでクムジュン村に出発。ホテルの脇から続く道を下っていきます。
木々がなくなり視界が開けると、右手にタムセルクやアマダブラム、前方にクーンビラ、そしてその麓にクムジュン村が広がっていました。
上から見る村は、目新しいマッチ箱のような家が並んでいて、ひなびた山奥の村というイメージとは少し違いました。
ここは人口2千人の小さな村で、多くの優秀なシェルパの出身地だそうです。登山客の案内の仕事をするシェルパ族は他の部族より裕福なんだとか。
村の中に入ると、今までに比べてなんだかとても静かです。まず他の観光客がまったくいなく、村人さえあまりいない。さらに家からも話し声とか生活の音がほとんど聞こえてこないのです。
シェルパ族の聖なる山クーンビラに抱かれたこの村だからか、なんだかとても神聖な空気に包まれているような気持ちになりました。
クーンビラの山肌には鳥葬のための祭壇も見えます。
メインストリートからわき道に入って、クムジュン村のゴンパに向かいます。
畑や民家の間をくねくねと通り抜けていくと、働く村人たちに遭遇。ヤクの世話をしている人や、ミシンで裁縫をしている人、畑仕事をしている人、洗濯をしている人など、村の奥に入っていくとだんだんと村人の数が増えていきました。
しばらく歩くとゴンパに到着。白い壁にマニ車がならんだ建物とヒマラヤの山が良く似合います。
狭い入り口から中に入ると小さな中庭があり、それを囲むように観覧席が設けられていました。
管理人の人が本殿の鍵を開けてくれて、中に入ります。
薄暗い部屋にはご本尊の仏像と経典などがあり、典型的なチベット仏教のゴンパなのですが、ここには他にはないイエティの頭皮が保管されているのです。
ガラスのケースに大切に安置されていて、私たちにも見せてくれました。
なるほど
ちょっと大きめな黒い頭です。
確かに、小柄なシェルパ族が住むこの一帯で、これだけ大きな頭をもった何かがいたら、雪男と思うかもしれません。
本殿から出て、ゴンパの中庭から大きなマニ車が見えたのでその部屋に入ってみます。壁には仏像の絵がびっしりと描かれ、斜に差し込む光が幻想的に絵を浮かび上がらせていました。
中央のマニ車を引っ張るように回すと、静かなゴンパの中に鐘がチンと鳴り響きました。
少し休んでから、管理人の人にお礼を言って外に出ます。
再び細い路地を通って、今度は学校に向かいました。
この学校は、エベレスト初登頂を果たしたエドモント・ヒラリー氏が建てたもので、クムジュンの子供だけでなく、ナムチェバザールの子供達も通ってきます。
校庭に入ると、ちょうど小学校低学年くらいの子供達が、日当たりの良い一角で教科書を広げて勉強をしていました。
近くに寄ってみると、照れながら教科書に書いてある文字を読んでくれました。
そろそろお昼なので、学校の脇の道を通って帰路につきます。再びひと山越えなければならないのですが、この道がきつかった。
正規の道は遠回りなので、地元の人が使う道を行ったのですが、これが山の急斜面をほぼ直登するというまさに心臓破りの坂。
今までで一番というくらいぜーぜー喘ぎながらなんとか登りきりました。
しかし、ほっとしたのもつかの間、登ったそこにはヤクがいていきなり現れた人間に驚き臨戦態勢。闘牛場で見かける今にも向かってきそうな勢いです。
一緒にいたガイドさんが威嚇して先行グループは事なきを得ましたが、後続グループはちょっと襲われかかったそうです。
丘を下りほどなくホテルに到着。今日は昨日とは打って変わって泊り客で賑わっていました。どうやらほかにふたつのツアーが来ていて、そのうちのひとつが私達と同じ旅行会社のものでした。
彼らは、ここには1泊だけしてカラパタールまで行くとのこと。
時刻はすでに13時。もうお腹がペコペコです。
部屋に荷物を置いて昼食。ホットサンドとホクホクのフライドポテトが美味い。
午後は自由時間だったのですが、散策はせず、ホテルの庭で写真を撮ったりしてました。
雲が湧いてきたので一旦部屋に戻り、しばらくしてから様子を見に外へ出ると、カラパタール組みの一人がいたので庭に椅子を並べておしゃべり。行程表を見せてもらうと、まだまだ長い道のりが記されていました。
ますます雲が出て冷えてきたので夕食まで部屋で休憩。
しばらくたちストーブで暖まっていると、Tさんが来て夕焼けが見えると教えてくれました。
さっそくカメラを持って外へ出ると、雲の間からピンクにそまるタムセルクが覗いています。もうちょっと雲がなければよかったのですが、そればかりは仕方がありません。
夕焼けが終わると、だんだんと雲も晴れ、今度は雪を被ったヒマラヤの山々が、藍色の空にうっすらと白く輝き始めました。
とても静かで神秘的な美しさです。
19時。1階の食堂で夕食。
今日はホテルに来てくれたことの感謝の意味を込めて心づくしの日本食とのこと。出てきた料理は、天ぷらにコロッケ、たけのこやしいたけの煮付けなどで、天ぷらには大根おろしもついていました。そして、最後にはケーキのサービスもあり。
また、ここのホテルのマネージャーのタラさんは、毎年夏の間は日本の剣岳の内蔵助山荘で働いているということで、日本語もペラペラ、山歩きの達人でもあります。
夕食後、カラパタール組みに向けたガモーバッグの講習があり、私達も見学させてもらうことにしました。
ガモーバッグとは、高山病になった人をこの中に入れて、外の空気を送り込み気圧を上げた空間を作り出すもので、救助のヘリが来るまでの間の応急処置に使うものだそうです。
聞けば、今いるシャンボチェより先からどんどん危険になり、最終目的地のカラパタールまでたどり着けるのは、全体の6割ほどだとか。その間で脱落した人は、最初に脱落した人のところまで下山してみんなを待ち、歩けないほどの重症になってしまったらガモーバッグのお世話になるらしい。
本当に命がけのトレッキングです。
講習も終わり、解散。
ホテルの裏に行くと、天の川が良く見えるとの話を聞いたので行ってみました。確かに、まわりの明かりも少なく、庭で見るより遥かにたくさんの星が見えました。
バルブをしやすいように改良したカメラをセットし、再び星空撮影に挑戦。
あとでパソコンで見ましたがやっぱり難しい。
でも、あの宇宙のような空は目に焼き付きました。