薬研温泉旅行記#1
開湯400年!青森県下北半島の秘湯でカッパの伝説が残る名湯
2016年3月。青森県下北半島の薬研渓谷にある「ホテルニュー薬研」に宿泊し、開湯400年の温泉と大間のマグロづくしの料理を楽しんだ。河童の伝説が残る奥薬研には日帰り温泉の「夫婦かっぱの湯」があり、大畑川が流れる薬研渓谷には森の中を歩ける散策路やキャンプ場もある。
1日目:羽田~三沢空港~薬研温泉
羽田から青森の三沢空港までひとっ飛び
今日から2泊3日で、青森の下北半島にある秘湯「薬研温泉(やげんおんせん)」へ出発。今回は飛行機と宿がセットになったフリープランで、久しぶりに国内線を利用します。天気は快晴で、羽田空港からは飛行場の向こうに富士山の姿も見えました。
ほぼ定刻に飛び立つと、上空からは富士山の他にも雪をかぶった山々が綺麗に見下ろせました。
羽田から三沢空港までは1時間半弱とあっという間のフライト。そのため、機内食はなくドリンクのみのサービスです。
そして、景色を眺めてコーヒーを飲んでいると早々に下降開始のアナウンス。ホントに飛行機って早い。。三沢空港に着陸すると、あちこちに航空自衛隊の戦闘機が駐機していました。
飛行機を降りてターンテーブルに向かいます。空港の建物はとても小さいので迷う心配は無用。荷物もすぐに出てきました。
ロビーで、今回宿泊する「薬研温泉ホテルニュー薬研」(現在閉館)の送迎の人と落ち合い、他のお客さんとも一緒にバスに乗車。ここから薬研温泉までは、休憩も含めて約3時間の道のりです。
六ヶ所村を通り『道の駅よこはま「菜の花プラザ」』で絶品ホタテランチ
空港から出るとすぐ「三沢空港温泉」なる施設を発見。※帰りに寄ったのでそのとき詳しく紹介します。
まずは太平洋沿いの国道338号線を北上。広大な畑が広がるのどかな風景がずっと続き、なんだか北海道の雰囲気とよく似ています。まあ、海峡を越えてすぐなので当然かもしれませんが。
左手に大きな小川原湖が見えてきました。この湖は日本で11番目の大きさでワカサギが釣れるのだそう。
そこをすぎて六ヶ所村に入ると「原子燃料サイクル施設」、「石油備蓄基地」、「風力発電」、そして完成すれば日本で一番大きな規模になる「太陽光パネル群」と立て続けに現れます。そのため「エネルギーの村」と言われているのだとか。
JR大湊線の踏切を渡り、横浜町の道の駅よこはま「菜の花館プラザ」でランチです。
道の駅よこはま「菜の花プラザ」
道の駅よこはま「菜の花プラザ」は、国道279号沿い、むつ湾に面し、国定公園下北半島の玄関口に位置しています。菜の花プラザのある横浜町は、菜の花の作付け日本一を誇っており、毎年5月になると大勢の観光客で賑わいます。(HPより引用)
ランチは、ここに併設されているレストラン「鮮菜」でいただきました。店内は天井が高くとても開放的で窓側にはお座敷もあります。下の写真ではまだ空席がありますが、このあと地元の人をはじめ、観光客や出張のビジネスマンたちですぐに満席になってしまいました。
運転手さん曰くここのおすすめは、地元の漁師さん直送のホタテを使用した「ホタテ塩ラーメン」。実際、席に座って待っているとあちこちでこのラーメンを注文する声が聞こえてきました。友人はこのラーメンにし、私はもうひとつの特産である菜の花を使用した「菜の花とホタテのクリームコロッケ定食」に決定。
ラーメンは、周りに海苔が敷き詰められホタテの身も貝柱ごとゴロゴロ入っています。あっさりの塩スープですが、ホタテのうまみがよく出ていて美味しい!コロッケは、ホタテと菜の花が濃厚なクリームと混ざっていてこれまたいける。ボリュームもあり値段もリーズナブルなのでおすすめです。
この「菜の花プラザ」には、観光客用のお土産から野菜、特産品などの他、レストランに入らなくても「菜の花ドーナツ」や「ホタテコロッケ」、「菜花ソフトクリーム」なども食べられるので、ちょっと休憩するのにもピッタリです。
開湯400年の薬研温泉で最大規模のホテル「ホテルニュー薬研」
『道の駅よこはま「菜の花プラザ」』を出発すると、真っ青な陸奥湾とその向こうに雪を被った釜臥山(かまふせやま)の姿が見えました。日本三大霊場として有名な恐山もこの山にあり、頂上付近には展望台が設置されています。そこからの夜景は「夜のアゲハチョウ」とも言われとても美しいのだとか。
むつ市に入り大畑を過ぎると山奥度がぐっと増してきます。
道の駅から1時間ほどで薬研温泉郷の入口と恐山への分岐に出ました。右に行くと薬研温泉です。
薬研温泉は、開湯400年の歴史ある温泉郷で、1615年に「大阪夏の陣」で敗れた豊臣秀吉方の落人がこの地で温泉を発見したと言われています。「薬研」という名は、温泉の湧出口が漢方薬を作る薬研という道具に似ていたということから名づけられたそう。
今日から2泊する薬研温泉ホテルニュー薬研は、薬研温泉の一番奥にありました。森に囲まれた赤い屋根のリゾート風の外観です。
ロビーに入ると、リンゴジュースのウエルカムドリンクがありました。さすが青森、おいしいです。ジュースを飲みながらホテルの説明を聞いた後さっそく部屋へ。部屋は和室で、窓からは周りの原生林や山並みを見ることができます。設備はごく標準的で可もなく不可もなくという感じ。
ちょっと休憩してから外の散策に出かけました。※明日も同じような場所を歩くので、周辺観光の内容は後でご紹介します。
「ホテルニュー薬研」のヒバが香る温泉
散策を終えてホテルへ戻った後、400年の歴史を持つ温泉に入りに行きました。ホテルには、内湯と露天風呂が男女それぞれひとつづつあります。泉質は無色透明のアルカリ性単純泉で、刺激も少なく優しいお湯。源泉かけ流しの温泉には、リウマチや神経痛、疲労回復などに効く効能があります。
洗い場は内湯にしかないので、まずはそちらに行くのがいいでしょう。内湯は青森県産ヒバづくりの木の湯船でとても温かみのあるお風呂。お湯には、ヒバチップが包まれたテルテル坊主が浮かんでいます。
続いて、露天風呂へ。本館から囲いのある通路を通って行きますが、冬には通路の入口にちゃんちゃんこが置いてあるので、寒い場合はこれを着ていきましょう。
非常口のような分厚いドアをあけ、渓流のすぐ目の前のお風呂へ向かいます。露天風呂は石造りで内湯とはまた違う雰囲気。お風呂から下をのぞくと大畑川の流れを見ることができます。
大自然に囲まれながら入る温泉はやっぱり最高。東京からの移動の疲れがすっかり取れました。
下北半島の食材が満載の夕食 とお寺で醸造した恐山ビール
お風呂の後は夕食です。地下1階にある食事処でいただきました。
今夜のお品書き
- 小鉢:イカふかひれ風マリネ
- お凌ぎ:海峡サーモン握り
- 造里:近海マグロ・帆立・甘エビ
- 焼物:県産ブリ照焼、九十・レンコンの芽、牛肉巻き・濱もみじ、帆立チリソース
- 鍋物:ガーリックポークトマト鍋
- 酢物:クラゲ・ふき甘酢、市松リンゴ・南瓜ソーメン、花大根・有頭エビ
- 強肴:イカソーメン
- ご飯:あわとむかごのご飯
- 香物:いかすみ沢庵・茎レタス
- 吸物:郷土けいらん
- 留椀:いかすみうどん
- デザート:リンゴプリン
下北の食材をふんだんに使った料理がたくさん並び、ごはんは一人ひとり小さなお釜で炊いた炊き立てが供されます。食前酒には、ホテルオリジナルの地酒「薬研のかっぱ酒」もついていたのですが、日本酒なのにとても甘くて梅酒のような感じ。アルコール度数も8~9度ということで、これはジュース感覚でどんどん進んでしまう。種類も多く目にも楽しい食事を満喫できました。
部屋に戻ってから、来るときにランチで寄った『道の駅よこはま「菜の花プラザ」』で購入した地ビール「恐山ラガービール」を飲んでみました。
恐山ラガービール
大間町奥戸にある崇徳寺にて醸造している地ビールです。境内にわき出す天然水をつかい寺の住職が地ビールを仕込んでいます。瓶内で二次発酵させるボトルコンディションタイプ。 ラガービールはまろやかな味わいと強調されたホップの風味が特徴的で、アンバーに近い色合いが旨さを引き立てます。(お店より)
これは、今まで飲んだビールの中でも香りが強く味も濃い。ビールを飲んでます!という感覚を強く感じられると思います。お寺で醸造しているというのも面白いし、ビール好きの方、ぜひ一度お試しあれ。
2日目:薬研温泉
味付昆布に感心「ホテルニュー薬研」の朝食
朝食は、夕食の時とは別の食事処でいただきました。一階にあるので、窓からはまわりの自然豊かな景色を見ることができます。
バイキングではなく一人一人にセットされた御前で、朝から帆立の貝焼き(型の皿を使用)もありました。
他にも中央のカウンターにパンも用意されトーストすることも可能。飲み物は、リンゴジュースやミルク、コーヒーなどがあり好きなものを自分で取りに行きます。
今日の朝食で目を引いたのは、おそらく覚えている限り初めて見た「味付昆布」。よくある味付海苔の昆布版で、海苔と同じようにご飯を巻いて食べるのですが、このアイデアに思わず感心。パラパラとすぐに崩れるので、ふりかけのようにして食べるのもいいかも。新しい発見もあった温泉地らしい朝食でした。
清流と森が織りなす薬研渓谷を歩いて奥薬研温泉へ
朝食のあとは周辺に広がる薬研渓谷の散策に出かけました。まずは、ホテルの脇の県道を進み奥薬研温泉へ。奥薬研には、広い露天風呂がある「夫婦かっぱの湯」があり、そこの「奥薬研修景公園レストハウス」では休憩や食事をすることができます。ここからは2キロほどの距離なので歩いても30分くらい。
緑ががかったきれいな水が流れる大畑川の渓流沿いに歩いていきます。周りにはブナやヒバなどの森が広がり木漏れ日が美しい。
雪がない時期は舗装された県道ではなく、森の中の山道をトレッキング気分で歩くことができます。トロッコの線路跡やトンネル、吊り橋などの見所もあり。奥薬研まではほとんど平坦な道のりで、渓流には大小の滝があったり、岩場から温泉が沸いていたりして、ラクなわりに楽しませてくれます。
車で行くのもいいですが、せっかくなので綺麗な景色を見ながらのんびり歩いていくのがおすすめ。
河童の伝説が残る奥薬研温泉「夫婦かっぱの湯」
そろそろ奥薬研に到着というころ、「かっぱの湯」と書かれた大きな看板が現れました。最初、ここかなと思ったのですが、こちらは今は利用できない「かっぱの湯」で、目指す「夫婦かっぱの湯」とは別物。
「夫婦かっぱの湯」は「かっぱの湯」からほんの数分のところにありました。お風呂を管理する「奥薬研修景公園レストハウス」は、このあたりの名産のヒバの木で建てられたログハウス風の建物。敷地内には無料で利用できる足湯もある他、電気自動車の充電設備なども完備されています。
レストハウスの駐車場の脇にはカッパの像が建てられていて、「かっぱの湯」の由来が書かれた案内板もありました。
「河童の湯」の由来
湯の股渓谷にある露天風呂・通称千人風呂は、別名河童の湯ともいわれ、これには伝説が残っている。貞観四年、今からさかのぼること一千百余年の昔、円仁慈覚大師が恐山を開山した後、薬研渓流をたずねることになった。大師は、道に迷って、丈余の崖から足を踏みはずして転落し、思わぬ大怪我をしてしまった。
慈覚大師は渾身の力を振り絞って断崖から這い上がり、大滝の川原で身体を休め思案にくれていたところ、夜半どこからともなく、大きなフキの葉っぱをかぶった一ぴきの河童が現れた。折からの満月にうかれながら慈覚大師の前に出て怪我のために苦しんでいる様子を見て何と思ってか、突然大師を背負っていずこともなく運び去ってしまった。翌朝、慈覚大師が眼をさましたところ、身体ごと大きなフキの葉っぱに包まれ、露天風呂の中に入れられていた。
そして、不思議なことに、昨日の痛みはすっかり消え失せ渓谷をわたる夜明けの風もさわやかに、もとの元気な姿に返っていた。慈覚大師は、この奇特な行為をことのほか喜び、河童の義心にすっかり感激して、そこを「河童の湯」と名付けたといわれる。それ以来、満々と湛えられたこの露天風呂の湯に満月が映ると、大きなフキの葉っぱをかぶった年老いた河童があし笛を鳴らしながら踊る姿が見られるという。(案内板より)
昔話によくありそうな伝説ですが、満月のくだりなんてとても風流で素敵です。
さて、さっそくお風呂に向かいます。レストハウスの中で入浴券(大人250円)を買い専用の入り口から川岸の温泉へ。トイレはこの先にはないので、建物の中で済ませてから行きましょう。浴場は男女に分かれていて、それぞれに屋根つきの脱衣所があります。
男女の浴場のしきりの上に夫婦のかっぱの像があり、そこからコンコンとお湯が湧き出しています。お湯の温度はけっこう熱い。
開放的なお風呂のすぐ前には大畑川の渓流があり、森の香りがする涼しい風が心地よい。このときは貸切で、一人で大きなお風呂を満喫できました。
「奥薬研修景公園レストハウス」のボリューム満点のランチ
温泉のあとは、「奥薬研修景公園レストハウス」でランチです。テーブル席とお座敷があり、食事をしなくても休憩することが可能。お店の一角には、ここを訪れた著名人のサインや周辺で撮影された写真などが飾られていて、サインの中には、私が大好きだった番組「ちい散歩」で訪れた地井武男さんのもありました。
テーブル席についてメニューを見ると、美味しそうな丼物がふたつ載っていたのでそれに決定。青森県産の「こだわりポーク」の豚丼と、大畑海峡サーモンの中落ちを使用したサーモン丼です。
ご覧のとおりのボリュームで、豚丼はしっかりとした味付けが散策とお風呂の後にはとても美味しく、サーモンは新鮮でもっちり。小鉢にもイカや帆立、デザートにはリンゴが使われ地のものが存分に味わえます(季節によって内容は変更)。
かなりお得感のあるメニューなので、お昼時にここまできたらぜひお試しあれ。他にも名物の「いかすみラーメン」などもあります。